2012年4月26日木曜日

読後感「この国の不都合な真実」菅沼光弘著

つい最近も著者の本を読んだばかりだが、元公安調査庁調査部長までした人なので、一般市民が知らない事を沢山知っている意味で面白い。今回はTPP問題から入り、この問題で締めくくっている。要は「アメリカの言いなりになってはいけない。」との警鐘にに尽きるのだが。実態的には如何にアメリカが巧妙、時に大胆に我が国の形を変えてアメリカナイズしてきたかを縷々述べている。

いちいち尤もな話ばかりで、正にアメリカナイズされ続けたその当事者としては、思い当る事ばかりで忸怩たる念を禁じ得ない。アメリカの具体的手口について成程と思うのは、リビアのカダフィの件だ。都合よく属国化する際、最初は友好的に接近して、後に国民をうまく煽って市民の手でトップを殺害させる。後は意のまま、やりたい放題。言われてみればその通りかもしれぬ。

著者は公安畑なので必ずしも警察とは仲が良くないらしい。最近はやりの暴力団排除条例についてはかなり批判的でもある。別にやくざを礼賛する気はないだろうが、世の中を一元的に見ずに、複数の角度から見る目を持つ必要はあるだろう。検察の腐敗や司法制度の問題にも触れているが、全てはアメリカの都合と見れば大凡の解釈が出来そうだ。

複眼的視点を垣間見せるのが、野中広務引退の真相(らしき裏話とも言うか)。小泉純一郎との確執或いは権力闘争か、背景には山口組と稲川会やら、同和予算、食肉調整資金、司法までが複雑に絡んだ抗争であったことを仄めかしている。政治家の通信なんかは殆ど全部アメリカは把握しており、時に応じて上手くそれをリークするのだそうだ。

貧弱、いや存在しないに等しいとされる日本の諜報機関。とは言えそのトップに近い地位にいた人の書くことだから、「嘘でしょう」と笑い飛ばす訳にもいかないところもある。

2 件のコメント:

Don Koba さんのコメント...

いつも興味深い本の紹介ありがとうございます。第二次大戦後、パックス・ブリタニカの後を次いで、世界のヘゲモニーを握ることに成功したアメリカだからこそ、その特権を維持するためあらゆる努力をしてきた。情報力や武力の面でそれなりの手配を怠りなくやってきたし、今もやっている。日本が強国となり再びアメリカに牙を向けることがないよう巧妙な手段をとっていることに菅沼氏は気が付きそれを吐露したかったのだろうか?それに対抗するため日本は具体的に何をするべきかを提言しているのかが気になるところです。ただ、公安の裏話なら、週刊誌に毛が生えたものになりかねないけれど。

senkawa爺 さんのコメント...

Don Kobaさん
いつも適切なコメントをありがとうございます。
菅沼氏の意図は貴兄ご指摘の通りだと思います。
牙をむくつもりもありませんが、アメリカなり中国の属国になるのは何とかご勘弁願いたいものです。
石原慎太郎みたいキチガイじみたのも困りますが、若い人にはできるだけ近代史を学んでほしいものです。