2014年8月20日水曜日

景気に関する素人談義

昼飯を食いに行ったら事務所を仲介してもらった不動産屋の小父さんと相席になった。500円の定食の注文も同じだった。挨拶代わりに「景気はどうですか?」と聞くと、案に相違して「あんまりパッとしませんな。」「え?オリンピックを見込んで都内の景気上向きじゃないのですか?」重ねて質問すると、この不動産屋さんかなりの博識なようで面白い話をいろいろと聞かせてくれた。先ず、この前のオリンピック景気を記憶している年寄りは景気が良くなると思っているらしい。

ところが、我々、当時は高校生ぐらいではオリンピックで東京ががらりと変わり、不動産も高騰して景気が良くなったなんてことの実感には乏しいのです。まして、もっと年下になれば尚更でしょう。そこでどんな現象が生じるかと言えば、仕入れは高値になっても売値が思い通りにならず結局損をして処分するなんてことが起きてしまうのです。不動産屋もご承知の通り乱立していますから、売り物が出た時高いからと手を束ねていたのでは商売になりません。

競争に勝つためについ無理して仕入れてしまうのです。でもいつまでも在庫を増やす訳には行きませんでしょう。最近の商売はきついものがありますよ。それでも最近3千万円の大型商談をまとめたそうで、ご褒美にボーナス5千円頂いたと嬉しそうだった。年齢的には未だ70歳には届いていなそうだが、まあ、同世代と言えよう。そこから延々と話を聞いたのだが、かなり文学的素養をお持ちのようで、ヨーロッパの文学者の名前が次々と引き合いに出されて、相槌の打ちように苦労してしまった。

彼が謂わんとすることは「これから日本はきっとロンドンのようになっていくに違いありませんね。」である。こちらが行ったことがあるとの前提で話を進めてくれたのだが、敢えて否定して話の腰を折るのも失礼だと思ったので、黙って拝聴した。経済発展の要素が無くなりつつある点において、ヨーロッパと同じと言うことらしい。失業が者が多くて新規の建設なんかは殆ど見受けられず、補修工事ばかりじゃないですか。日本も遠からずそうなるに決まっています。単に生産人口が減少するだけでなく、企業の形がすっかりグローバリズム化して正社員が殆どいなくなってしまったことも、経済発展を著しく阻害する要因になっている。ここから、ニーチェだとか難しい文学の話が沢山出てきたのだが、殆ど理解できずだ。

彼の会社でも殆どが非正規社員で、非正規社員は人材不足の影響で、彼らの賃金は多少上がってはいるが、代わりに正規社員の給料なんか殆ど上がらないらしい。だから5千円のボーナスがとてもありがたいとのこと。若い人の悪口を言うようで気が引けるが、今の若い人たちにどんな夢がありますか?妻を娶って子供を持ち、自分の家を持つことを夢見るなんてことは、その道で辿ってきた我々の考えで、今の人たちにそんな夢なんか持っていないと思いますよ。生まれた時から何か欲しいと思えば殆どの物が手に入る人生だった訳ですから、我々と同じように考えろと言っても無理でしょう。

最後に彼の人生観が語られた。「私はもう子供も仕上がったし、首都圏界隈の札所は全て巡り終えたので、あとは四国の札所巡りをするだけです。既に健康診断を受けるのは止めているのですが、何かの拍子で癌でも発見されたら、退職金から100万円握りしめて88か所のご遍路に出発します。」全部廻るのに2か月かかるのだそうだ。

立派なお心構えに感心して拝聴したが、健康診断を受診していないと病気も発見できないような気がするのだが、そんなことはどうでも善いのだろう。市井の小父さんの与太話だが、印象に残ったのは、地方は兎も角、首都圏ではと言われている景気であるが、首都圏でもそれ程でもなさそうなことだ。

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