2024年12月5日木曜日

読後感「イーロン・マスク」W・アイザックソン著 井口耕二訳

 上下2巻で合計900頁ちかいボリューム。主人公イーロン・マスク氏はご承知の通りアメリカ次期大統領に決まったトランプ氏の選挙運動を多額資金で支え(今年5月から約半年で180億円と言われている)、当選後はトランプ氏の閣外に留まるものの、最有力スタッフになるとされている。その若干53歳かのマスク氏の評伝で、昨年9月末に世界で同時発売になったものだ。野次馬根性で読んでみた。

超有名人マスク氏が南アフリカ出身の天才で、若くしてアメリカに渡り、衛星、自動車、ロケットなど数々の発明によって多くの会社をつくり、世界一のお金持ちになったことは誰もが知るところ。共和党トランプ氏に寄り添う前は民主党政権からも多くの利権、と言う言い方は適切でないかもしれぬが、事業委託に与り政府委託事業で莫大な利益を上げていること。例えばウクライナの通信インフラは全面的に彼の事業がサポートしなければ成り立たない状態にあるし、この費用はアメリカの政府予算から出ていることは知る人は多いかもしれぬ。

兎に角、異能の人となりを著者は上手く捉えて披露してくれている。面白いと言えばそうかもしれぬが、世の中の進歩に関して無関心な人にはつまらないかも。しかしマスク氏の人格に関する描写だけでも面白い。天才であることは否定できないが、精神科の医師がアスペルガー症候群と断定できる一種の病人とも言える。要するに他人とのコミュニケーションが上手くいかぬらしい。

でもおそらく数千或いはもっと多いかもしれぬが、の人と交わりながら一種の帝国を築き上げたプロセスは一読の価値はあろう。女性遍歴や子供や家族のことも事実にどの程度沿ってるか知らぬが、かなり興味深い。内容が多岐にわたり、現在進行形なので感想を纏めきらないが、最終章近くに著者がうまいこと述べている。1700年代後半の英国でジェームス・ワットが、動力に蒸気機関の利用を唱えた時、誰一人「さぁ、今日から産業革命だ、バンザイ!」なんて叫んでいない。

同じことで、現代社会もインターネットを通じて大きな変革期にあるとのこと。マスク氏はAIによる人類の将来、地球の未来に不安を感じ、人類の火星への移住を追いかけているそうだ。この本を読んで共感する人もいることだろう。

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