2024年11月8日金曜日

読後感「記者と官僚」佐藤優・西村陽一 著

 昔から新聞記者にも官僚にも多少の縁があるが、その生活の一端を覗いた経験はあっても実態は正直今でも解りにくいので興味津々である。書き手の佐藤氏は元外務官僚で詳細は記憶していないが、鈴木宗男氏に絡んだ事件で特捜部に逮捕され、1年以上に及ぶ拘留経験を経て自伝的小説「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて」を発表、今では著名な文筆家・評論家とも言える。一方の西村氏については佐藤氏と年齢的にも近く、佐藤氏がモスクワ大使館勤務時代に知り合って、以来佐藤氏が逮捕された後、娑婆に出てからも付き合いを続けている数少ない新聞記者3人の一人とのこと。

その西村氏は現在は朝日新聞常務取締役 編集担当であるが、入社当初長野支局に居たこともあるようで、ここで日航機が御巣鷹山に墜落した時にいち早く現場に駆け付けた経験を書いている。その後の記者生活を通じて現場重視の重要性は今でも変わらず、佐藤氏も全く同感だと言っている。その後政治部に配属されたのだろう。若い時にモスクワ支局配属され、ロシアは10年ほど滞在したようだ。のちアメリカ総局長や政治部長職も歴任しているので、恐らくは世界各地を取材で駆け回り、各国要人の取材も多く佐藤氏の知り合いも多い。最近10年くらいはザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン代表取締役も兼ねているので、国際感覚だけでなくデジタルメディアに関する知見も相当なものだ。

佐藤氏と西村氏が知り合ったのがロシアなので、ロシアについての対談はそれなりに興味深く読んだ。しかし二人の生きた道はかなり異なる部分を含んでいる。佐藤氏は官僚出身でもあるので国益と言うものに凄く拘るところがあり、西村氏には真実の追求に関する拘りがあるのは当然だろう。小生にしても同じ気持ちはあるが、事実と真実は解りにくいものだ。知りえた情報の検証の必要など官僚であっても、記者であっても共通するところは多い。しかし外務省の場合は内部文書の全てがマル秘扱いになっていること。後の検証に関して現在のデジタル化が与える影響などについては考えさせられる発言も多かった。

特に記者の原稿や官僚の国会答弁用原稿書きについても共通するAI利用の是非、イーロン・マスク氏に関する評価等々。最も印象に残ったのは誤った情報による悲惨な結末。典型は国家が戦争で破壊されたイラクの例。破壊した側の責任は誰が取ったのだろう?一ボケ老人が理解するには少し難しいところもあるが、有益な読みものだったと思う。

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