2021年6月15日火曜日

読後感「小沢一郎の権力論」小塚かおる著

 数日前に読後感を上げたばかりなのに、再び上げることになった。遅読の小生には非常に珍しいことだ。最近マスコミに登場することが少なくなったが、現役政治家の中で、小沢一郎氏の動向には今でも大きな関心を持っている。この本が出版されたのは平成29年12月31日。私的なことだが家内の葬儀が終わった翌日。政治への関心を植え付けてくれた亡き妻との因縁さえ感じて読んだ。新書とは言え、最近1冊を一晩で読み上げた経験は無かった。

理由は簡単「非常に面白かった」からに他ならぬだろう。著者は日刊ゲンダイの現役編集長。故にだろうが、取材内容を編集者的に纏め上げている。内容の大部分は小沢氏の語りで、編集者の意図が随所に異なる書体で挿入されている。

内容は次の八章で構成されている。

序章:安倍 政権 の 死角

第1章:これが権力のリアリズムだ

第2章:あの『政権交代』の真相

第3章:私が見た田中角栄

第4章:政治は誰のためのものか

第5章:基本政策・安全保障、憲法、脱原発…

第6章:日本人よ、自立せよ

終章:私は闘う

これまでも何冊か小沢氏の著者や小沢氏について書かれた著書を読んだが、ずば抜けて氏の考え方がうまく纏められていると思う。氏の政治家としての使命感が伝わってくる。敢えて言えば、小沢氏の考え方の中で昔から1点だけ疑問を感じていることがある。昔からの持論で、自衛隊とは別に国連軍を創設することについてだ。本書でも第5章で触れられているが、この論理の合理性がなかなか理解しにくいのが少し気になることくらいかな。

氏は話下手だと思っているが、インタビュー内容は実にスッキリと纏まっている。中に羽田孜氏の葬儀の際、友人代表として読んだ弔事と、2017年10月の総選挙の際、地元の岩手県北上市の田舎で行った選挙演説がそっくり活字化されているが、これも非常に説得力があった。話下手とは思い込みだったのかもしれぬ。使われている写真も新鮮さが感じられた。

巻末にあった著者の略歴を見ると、執筆当時は日刊ゲンダイのニュース編集部長で、「安倍一強政治」を鋭く問う筆に定評ありと書かれていた。日刊ゲンダイと小沢氏に今後ますますの活躍を期待したい。


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