2021年4月6日火曜日

抽象と具体的事実

 日本でもやっとコロナワクチンの接種が始まったようだ。昨夜テレビで都内八王子市のお年寄りが接種を希望して、指定されたコールセンターに何度電話しても繋がらない様子が放送されていた。なんでも八王子市の高齢者は約15万人、対して市に届いたワクチンは1900人分とのこと。受付は電話かインターネットで先着順とのこと。まるでNTTの電話代稼ぎに協力するつもりかと言いたくなるような漫画みたい話だ。

政府は勝手にワクチンの配分数量を決めて、あとの実施は全て自治体にお任せらしい。居住地豊島区のホームページには接種会場7箇所が表示されるのみで申し込み方法すら表示されない。豊島区は未だだが八王子市に何故先に届いたかは分からない。政府官僚が行うこの杜撰さは何も今に始まったことではないが、ブログのネタで少し考えてみた。政策立案者に必要なことは何事によらず具体的な事実だ。国会論争で「立法事実」がよく質疑の材料となるがその通りだ。

しかし霞が関の官僚や政府要人にそれを確認している暇がないのが緊急事態ということになる。そこであらゆる手を尽くして情報を収集して、それを基に立法を進めることになる。ところがこの収集された情報は謂わば抽象画のようなもので、普通の人にはなかなか想像が難しい。凡人にピカソが描いた美人画を提示してモデルを想像せよと言うに等しい。

世間の動向を示す数字は全て抽象であり、現実は見つけにくい。具体的例をも一つ上げよう。ワクチン接種の再優先順位は医療関係者と聞いている。最初はこれが約300万人と発表されたが、暫くしてから430万人に変更された。どちらも杜撰な計算でいい加減あるのは同じこと。経験を踏まえて言えば、前立腺がおかしくなって最初に通った池袋の泌尿器科はドクター一人で受付嬢一人。受付嬢は日に依って代わっていたので二人居たと思う。ひょっとしたら女将さんと娘さんだったかもしれぬ。

そこから紹介されて転院した日大板橋は大病院、ここの関係者は何千人か知らぬが、派遣されている医学生はもちろんのこと、ガードマンや食堂、売店の社員から清掃業者の人たちまで含めれば相当な人数となる。要するに数字として抽象化された者や物は具体的な状況は何も示していない。にも関わらず判断すれば当然生身の人間からすると信じがたい結果を生じかねない。官僚ばかりではない、コロナ関係の専門家集団でも実際の診療行為に関わっている医師は果たして何人居るかだ。

分科会長として首相が杖とも柱とも頼る尾見氏なんか、コロナに関してはとても医者とは言えない。これでワクチンに限らずあらゆる政策判断がまともになる事を期待する事自体間違っている。政策立案者には、方針決定前に現場を知ることを切に望みたい。

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