2021年1月7日木曜日

1割の節約

 嘘か本当かわからないが、江戸時代の昔、少し偉いお侍は財布なんか持ち歩かなかったそうだ。要するにお金は不浄なものだから、武士は金銭に執着しないというやせ我慢だったかもしれぬ。それは兎も角、昨今は地獄の沙汰も金次第ではないが、朝から晩まで何でもかんでも金次第で参ってしまう。とは言っても個人にせよ家庭にしても経済が豊かに越したことはない。幸い親戚として付き合いのあるほぼ全員が当面三度の飯に不自由は無さそうだし、余計な無駄遣いをするほどの大金持ちもいないようだ。

これは結構なことだが、読者には若い人もいるので正月に思いついたことを書きたい。どうも最近偉そうなことばかり書いて些か後ろめたいことは予め断っておく。第一は、お金は必要以上に有り過ぎると碌なことにならないこと。問題は必要性だが、もちろん個人的に差異はあろう。現役時代に先輩から聞いたのは「その時点での一年分給料の預貯金を持つこと」だった。この目安は今考えても非常に説得力がある。要するに給料の1割を毎月貯金する努力をしなさいと言うこと。

商売をしている方には当てはまらないかもしれぬが、サリーマンに取っては大事な教えだ。「お前はどうだった?」と聞かれると、恥ずかしながらサラリーマン25年目(47歳)で最初の会社を辞めた時に手元にあった預金は100万円に満たなかったと思う。社会に出た当初から飲み歩き、給料の大部分が紅灯の巷に消えていった。しかし結婚後は妻に教育されてだいぶ生活態度も変わり、当時の年収も1200万円程にはなっていた筈なので不思議だ。

その理由をよく考えて思い至ったのが親父の有り難さだ。親父に言われて40歳になる直前に、銀行からそれこそ給料の半年分以上の借金をして、住んでいた借地を購入している。家の名義人は親父であるが、東京で地主になったことがその後の人生で大きな役を果たしてくれたと思う。この経緯だけでも詳しく書けば一編のストーリーとなるので省略する。兎も角、親父はこの息子に現金を持たせてはまずいと見抜いていたのだ。

第二は借金をしてはいけないこと。これも自分が社会に出た当初から(と言うより東京に出てきた学生時代から質屋通いをした記憶がある)借金を重ねて苦労した経験から言うのだ。自ら稼いだ金で何をしようと勝手かもしれぬが、借金だけは相手が誰でろうと絶対にしてはいけない。サラリーマンであれば、生活を切り詰める方法を工夫しなければいけない。借りた金に利子を付けて返すなんて馬鹿げたこと。生活の簡素化は生涯役に立つ。

これも商売をしている人にすれば「なんのために銀行があるのだ?」で通用しない理屈だろう。いきなり結論めくが、80歳を超えた今思うのは、お金だとか経済は思ったほど役に立たないと言うことだ。金で健康が買えるか?否だ。金で知恵が買えるか?否だ。経済の活性化で国民の命が救えるか?全く救えない。皆同じことだ。

0 件のコメント: