2021年1月6日水曜日

読後感「赤い砂」伊岡瞬著

 元来日本の小説はあまり読まない。まして警察小説や刑事物など嘘くさくて読む気にならない。ところが、新年早々2日に娘の家に招待された帰り、娘が「すごく面白いから読んでみたら。」と土産代わりに持たせてくれた。どこかの書評でタイトルは記憶に有ったが、読み始めたら本当に面白くて、自分で年末に用意してあった書物を脇に置いて一気に(と言っても3日も掛かっていいる)読んでしまった。

伊岡瞬氏という作者も初めて知った。推理小説の分野では幾つかの賞も受賞しているかなりのベテラン作家らしい。本書はいきなり文庫本で文藝春秋社から昨年末の11月10日に初版が発行されている。しかしこれが書き下ろされたのは17年前の2003年のこと。この本の醍醐味は著者の<あとがき>にあるが、当時どの出版社でも採用されなかったと書かれている。内容的には著者の言葉を借りれば「友人のために命がけで奔走する若き刑事の物語」になっている。

しかし正直言って、この筋書きが特に面白いかったわけはない。主人公の刑事が亡くなった友人の死因に不審を抱いて、組織の枠を外れて首になりそうながら追求していく過程で、死因と深い関係があるウィルス菌のことが浮かび上がってくる。しかもこのウィルスが、現在世界をパンデミックに陥れている新型コロナ菌と同じRNA型なのだ。この菌は勿論外国から日本に持ち込まれた設定になっていて、日本で感染者が発生する過程で事件が起きる。

推理小説なので内容についてはあまり踏み込めない。ただ感心するのは明らかに文系の著者が、当時社会異問題になっていたインフルエンザワクチンの副作用にヒントを得て、人とウィルス菌との戦いに新規性を見つけ追求したことだ。これも<あとがき>に述べられているが、ウィルスは未だに始末が悪くて有効な薬の開発も遅々として進まず、ワクチンも同様だ。

今回は多くのワクチンが1年足らずで開発されたように喧伝されているが、ノーベル賞を受賞された本庶佑氏が警鐘しているように、どこまで信頼できるか分からない。昨年4月1日に福岡伸一氏著の「生物と無生物のあいだ」の読後感を書いたが、この時も今もDNAとRNAとの違いが理解できたとは言い難いが、この本によって少し理解が進んだのは間違いない。何れにせよ、著者が作品に求める新規性は少し色あせていない優れた読み物と言える。

2 件のコメント:

呑兵衛あな さんのコメント...

日本では弱者優先とやらで高齢者と持病持ちが優先だそうです。
一方インドネシアでは、若者をモルモット役として先行する考えで、大統領がいの一番でファーストペンギンになったとの事。
どちらが正しいのか判りかねますが、私は進んで接種を受けようとは思いません。
尤も私の見立てとしては、どう決めたフリをしたところで、そもそもワクチンが入ってこないだろうと踏んでいます。
東京も一気に増えました。かくいう当地も田舎にしては立派な状況です。
正確な致死率は最近発表されていないようですが、以前の話題では3-8%とか。
気をつけましょう

senkawa爺 さんのコメント...

呑兵衛あなさん
いつもありがとうございます。
本当に物の見事なまでに全国に災いが拡散しました。
これからは大分長いこと辛抱を覚悟しなければならないようです。