2020年9月27日日曜日

砂上の楼閣

 菅首相が国会で国民に向け所信を表明する前に、25日の金曜日リモートであったが国連総会で一般討論演説を行い、来年夏の東京五輪・パラリンピックについて「人類が疫病に打ち勝った証し」として開催する決意を表明した。決意は結構だが、果たしてその根拠が奈辺にあるか、首相自身も証明できないし、保証してくれた専門家が居たわけでもない。ただ、IOCのバッハ会長やコーツ調整委員長は前から、ウイルスが「あろうがなかろうが」開催されると言っている。

IOCという組織は特にどこかの国や国民に責任を負わない気楽な立場であるのは言うまでもない。悪く言えば一種の興行師、イベント屋だから祭りが開催されれば儲かる連中だから国連で演説できる立場ではない。しかし日本国総理大臣となると発言の重みが大分異なる。約300日後に予定されているイベントが安全に実行できる根拠無しに「打ち勝った証し」とは少し言い過ぎではないか。菅首相は日本の感染者や死亡者が少ないことに希望を繋いでいるのだろうが、オリンピック・パラリンピックは日本だけの催事ではない。

全世界の国々から多くのアスリートと観客を呼んで盛り上げる4年に1度の世界最大級のお祭のはず。日本国内では感染者が劇的に減り始めているわけでもないのに旅行制限を緩めたり、海外からの入国制限を緩めるよう進めているが、世界でこんなに呑気な政策をとっている国は無いだろう。むしろ感染第2波を警戒して再び3月のように対策を強化し始めている国さえ多い。日本良いとこ一度はお出で、と張り切っても、今後10ヶ月後にこの状況が劇的に改善されると予測している国も無い筈だ。

ひょっとしたらアメリカのトランプ大統領は似たような観測をしているかもしれない。彼は任期中にワクチンが開発され全国民に摂取可能と言ったりしている。(しかし国内の専門家はこれを否定している)兎も角、日本の首相が人類を代表して述べたことが海外でどのように報道されたか分からないが、もしまともに報道されたら多くの人が違和感を覚えたことだろう。何もオリンピックが中止になることを望んでいるわけではないが、僅か300日間で奇跡が起きることを信ずるほど甘くもない。

IOCが強引に事を進めればオリンピック史上例を見ない悲惨な大会となり、多くの人が虚しさを覚えるのではいだろうか。

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