2020年9月28日月曜日

読後感「防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織」福山隆著

 2013年5月30日初版だから少し古い本になる。しかし書かれている内容は現在の日本を見事に見通していることに先ず驚いた。本書を読むきっかけになったのは先週BS・TBSの「報道1930」を観ていた時、出演していた元防衛大臣の中谷元氏と元外務審議官田中均氏との発言に大きな落差を感じたからである。中谷氏は防衛大学出身だから生粋の自衛隊員、言わば軍人。田中氏は言わずとしれた外務官僚時代に北朝鮮から拉致家族を取り戻した張本人。

防衛省と外務省が昔から仲が悪いことは聞いていたが、双方の出身者が面と向かって話す時、こんなにも意見が食い違うは何故だろうと改めて考えてみた。そこで見つけたのが本書。著者は元陸将で中谷氏が小隊長時代の中隊長で先輩に当たると書かれていた。外務省出向経験や日本大使館の駐在武官も歴任、且つ退官直後はハーバード大学アジアセンター上級客員研究員を2年間経験している。氏が自身の経験をベースに、日本のインテリジェンスのご粗末さを明らかにすべく執筆された著作と言える。

氏が真っ先に強調されるのは、国家にとって最も重要なことは常に国家を取り巻く周辺の事柄に鳶の目と兎の耳をもって注意していなければならない。情報は国家にとって衣服のようなもので、極論すれば「志の無い国家に情報は不要」と言い切っている。しかし残念ながら日本は、戦後アメリカの庇護下に置かれ国防・外交に関してはアメリカに追従を旨とし、独自の「志」を持たなかった。或いは持つ必要がなかったのかもしれない。

また著者は現在の米中対立を2013年の段階で見事に予見し、アメリカが国力からして分不相応に戦力を拡大しつつあるが、何れ経済的に行き詰まり、12年後(現時点からは5年後)米中のパワーバランスが逆転するだろうとも言っている。その時になって慌てないように、日本も独自のインテリジェンス機能を高める必要性を強調したかったのだろう。

少し具体的に言えば、日米同盟を日本側から破棄することは決して許されないだろうが、何らかの理由でアメリカが日本を見捨てる日が来ないとも限らない。

将来予測はおくにしても、同盟国と言えど米に関する知識の不足は勿論、近隣諸国に関する情報の足りなさを感じるには、イスラエルのことを学ぶべきだとも言う。アメリカには日本のことを専門に研究する学者が2千人以上いるそうだが、日本は外国事情を殆どアメリカに頼り切っているので本当の諸国の事情が分かっていない。

本論に戻れば、アメリカからの情報は全て先ず外務省に入るので、国防的見地に立てば、日本では外務省が第1国防省とも言えるのだそうだ。詳しくは書かないが、防衛省と外務省の仲が悪い理由も分かった気がする。

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