2020年6月13日土曜日

読後感「1984年」ジョージ・オーウェル著
Haruka Tsubota翻訳

先日アップした「ペスト」と同じで、ディストピア(反ユートピア)小説の名作らしい。現在人類の大部分が置かれている政府に依る自由制限社会を先の大戦直後に英国の作家が描いている。いわば単なる野次馬根性で読んでみた。

発表されたのは1948年、世界大戦が終わり東西の冷戦が始まっていた。英国はもちろん自由主義陣営だが一方のソ連は今で言えば北朝鮮のような全体主義だったのだろう。著者は二極対立が結果的に双方に全体主義が及びかねないと心配して書いたのかも知れぬ。

描かれているのは完全な仮想国家。イギリスをイメージしながら書いていると思うが、国民は全員国家に監視されていていて自由にものも言えないし、自由にものを考えることさえ管理されている。主人公は一市民であるが、仕事はこの国の歴史文書を現在の都合に合わせて書き換える役目を担う官僚である。

この時代、世界は三分割されていつも戦争をしているが、この戦争も敵や味方が定まらず、入れ替わったりするから現状に合わせて歴史をしょっちゅう書き換える必要がある訳だ。主人公はある女性に心を引かれるが、彼女は市民を監視する役目のパトロール的な役目を担っている。市民は国家のために働くことを優先しなければならぬので、逢引もままならぬが、彼女が秘密の場所を見つけて逢瀬を重ねる。

しかしこれも結局監視機関にキャッチされて、一種の政治犯として二人共収容所送りとなり思想改造が行われる。あらすじをザックリ書けばこんなことだが、80年近く前に書かれたとは思えないくらい、現代社会には似たような状況が垣間見られることに驚かざるを得ない。著者は1903年誕生して1950年に僅か46歳で亡くなっている。この作品の発表が1948年だから晩年の作だ。

タイトルの「1984年」は本書発行の1948年をもじったもおのらしい。描かれている国家の中で中心的な役所は次の通り。
1.平和省:軍を統括し平和のために半永久的に戦争を継続している。
2.豊富省:絶えず欠乏状態にある食料や物資の、配給と統制を行う。
3.真理省:政治的文書、党組織、監視機能を管理、プロパガンダを担う。
4.愛情省:個人の観察・逮捕、反体制分子の尋問と処分を行う。
まるで嘘と欺瞞に満ちた2020年の日本政府を暗示しているようだ。

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