2020年4月1日水曜日

読後感「生物と無生物のあいだ」
福岡伸一著

昔から理数音痴ゆえ理系のことは分かり難い。しかるに最近は身の回りに便利な道具が出回り、これをある程度操作するにはどうしても理系の知識が必要となる。最近テレビコマーシャルなどで5Gなる単語が頻繁に出てくるようになった。使うつもりもないのに理系に強い友人に「5Gの電波は人体に有害は本当ですか?」と教えを請うたらすぐ返事があり、心配不要とのこと。

それから話題が最近流行りの新型コロナウィルスに跳び、巣篭もりしているなら面白いから読んでみろと薦められたのが本書。2007年に初版が出て、未だに版を重ねている名著らしい。著者は生物学者なので京都大学医学部出身のお医者さんかと思ったら、農学部出身の農学博士。

余談になる:30才前後の頃、食料関係の広告に関係した中で、当時著名な栄養学者やお医者さんたちと親しく交際を重ねた。ご存じの方は少ないと思うが、杉靖三郎氏とかラジオドクターで有名だった近藤宏二氏とかの他に川島四郎氏がいた。川島氏は京大ではないが京都の出身で東大農学部の出身で、後に陸軍に入隊。日本人の栄養問題については最高の権威となった人。事務局の偉いさんがいつも「医者は簡単に実験ができるが、農作物はそう簡単に実験ができないから農学博士のほうが偉いのだ。」と言って敬意を表していたことを思い出さいた。

この手の本は読むのが大変だろうと思ったが、僅か3日で読み終えたので近年まれに見るスピードだった。先ず、化学や物理の科学に疎いので内容を十分理解できないことはさておき、文章が素晴らしい。随筆書きを専門にする作家でもこれほどきれいな文章を綴る人は稀だと思う。著者の研究拠点が長年ニューヨークとボストンにあった。この二都市は数少ない滞在経験がの多い都市であることも共感を覚える一因だったかもしれぬ。

本を手にするきっかけとなった病原菌の「ウィルス」であるが、他の病原菌の微生物の違いが少し理解できた。微生物病原菌は生物であり、体積それなりに大きく視認も比較的容易であるが、ウィルスは大きさがラグビーボールに対するパチンコ玉ほどの大きさしか無いことから視認は極めて難しい。そこでPCR検査が登場してくること、テレビでおなじみのスターウォーズにでも登場しそうは形状の所以、とか、微生物と異なり個体では息もしなし単なる物質に過ぎないこと等々。読み物的には大変面白い。

これは序の口で、生命とはいかなるものかに経験談を交えながら迫っていく。一口で言ってしまえば正に鴨長明の世界、「今日の私は昨日の私ではない。」に尽きるかもしれない。

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