読後感「アイリッシュマン」
チャールズ ・ブラント著, 高橋 知子 翻訳

余りメジャーとは言い難い「ハヤカワ・ノンフィクション文庫」の上下巻2冊なので、よほど好きでないと買う気にならぬかもしれぬ。子供の頃から講談本を好んでいた癖が抜けずに購入してしまった。長い日数をかけてやっと読了した。この本の特徴は著者のあとがきが異様に長いところにある。著者チャールズ・ブラント氏はニューヨーク生まれ。ブルックリン法科大学で法学博士号取得。司法局に勤務し、デラウェア州検事総長代理(地検の次席検事に相当)にまでなったのち、ノンフィクション作家に転じた異色のご仁。あたかも推理諸説のようではあるが、著者が小説ではないと断っている。

彼がアメリカマフィア組織の中で殺人請負人として高名であった犯罪者(通り名が「アイリッシュマン」)とは現役時代から知り合いであったが、死ぬ直前の晩年に接近、1995年頃から2002年までの7年を掛けたインタビューの結果、書き上げた作品である。本書の発売は先月末であるが、アメリカでは既にロバート・デ・ニーロが出演した作品も映画化されており、製作がNetflixで配信されているので、映画館では観ることができないかと心配したが、都内では1月1日に池袋のマイナーな映画館で上映されるようだ。

マフィア組織はよく知られているようにイタリア系アメリカ人によって構成されているが、本書の主人公はアイルランド系アメリカ人で1920年生まれで著者のインタビューがほぼ終わった2003年に亡くなっている。生まれも育ちもフィラデルフィア。アメリカが第2時大戦に参戦すると同時に陸軍の兵士としてヨーロッパに渡り激戦の中生き延びて1945年に無事復員している。戦後様々な仕事につくがトラックの運転手とか酒場の用心棒なものが多く、必然的に戦場での経験が物言う世界に入っていったようだ。

膨大なインタービューが土台になっているので詳しく書く余裕はないが、肝は彼が全米トラック運転手組合(チームスター)のボスのジミー・ホッファに可愛がられてその世界でのし上がっていくが、最終的に日本流で言えば渡世の仁義でジミー・ホッファを殺すことになった。直接的には告白していないが、本書を読む限り告白も同然である。

そのことは扠措き、最も興味深かったのはアメリカ政界とマフィアの関わり方である。時あたかも日本ではカジノ賭博導入に関する議論が再燃する事件が発生している。ラスベガスは健全な娯楽都市になっていると錯覚している人が多いと思うが、そんなに甘くはないだろう。マフィアの全国会議なるもの実態は素人には永遠に解るまい。ケネディー兄弟は間違いなくマフィアの手にかかったと見て間違いなさそうだし、ジミー・ホッファもある日突然行方不明になっただけで未だに生死が判明していない。

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