2019年7月7日日曜日

読後感「新聞記者」望月 衣塑子著

2年も前の発売で賞味期限切れの感があるので、読後感はアップするのをやめようかと考えていた折から、今日のメルマガで次の記事を発見。『米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は5日(一昨日)、菅義偉官房長官が記者会見で東京新聞記者の質問に対する回答を拒むなど、そのメディア対応を指摘したうえで、「日本は憲法で報道の自由が記された現代的民主国家だ。それでも日本政府はときに独裁政権をほうふつとさせる振る舞いをしている。」と批判した。』

先日同名の映画を観て余りに詰まらなかったので、どうすればこんな映画になったのかと検証の心算で読み下したが、内容は全く異なっていた。映画は森友と加計学園問題をごちゃまぜにして仕立てた本書の趣旨とは全く異質のフィクション。本書は著者がこれまでの半生を明らかにする中で、新聞記者が置かれている実態、特に司法や国家権力との向き合いあい方を赤裸々に綴っていて、それなりに読みごたえがあった。

著者は当然のことながら一昨年秋の時点で、新聞と権力の向き合い方が同じ土俵に立っているとは感じられないし、これからも闘い続けないと国民に真実が伝わらないとの焦燥感を拭いきれないと、中途半端な形で本書を締めくくっている。言うなれば未完の書であって、小説や映画になるとは思っていなかったと思う。発行元の角川書店が映画製作も手掛けているので契約の際抵抗しかねたのだろうと推測した。

本書で著者が心配したことは何一つ改善されず、政府は相も変わらず国民に平然と嘘をつき、都合の悪いことを言う人間を少年探偵団モドキの諜報機関や、権力にすり寄らざるを得ないマスコミを使ってプレッシャーを掛け続けている。著者もとっくにその対象の一人になっているに違いないが、元気に活躍を続けているのはご同慶の至りでもある。因みに最初は儚い抵抗であるかもしれぬが、政府に対して抵抗力の弱い多くのマスコミの中にも、著者と同様、個人的にジャーナリストの使命を貫かんとする記者が多数いることも実例を挙げて紹介している。

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