2018年5月12日土曜日

千両役者

アジアの国々で、目下最大のイベントになりつつある来月12日に決まった米朝首脳会談。残念ながら我が国の政治的出番は少なくとも当日以降までお預けのようだ。なのに国中のマスコミが国内問題そっちのけで取り上げるようで、政治家からジャーナリストを自称する人まで一家言言わずには済まぬ風情だ。マスコミには行政が立法府を蔑ろにする内政上の大問題を大々的に取り上げる責任があるように思うが、政府にとれば好都合でもあるだろう。

ブロガーだから一億総評論家の端くれとして何か書きたいのだが、どうも異国同士のことなので、捉えどころが見つからない。代わりにこの騒ぎで思ったことがある。この騒ぎを論評する際に政治家が好んで使う言辞に「国際社会」があるが、これが分かったようでわからない。愚考するに国際社会には多様な国家と言語が存在するのだから、複数の国家間で戦争とか平和と言った単純な事柄であれば共通の認識も生まれようが、少し複雑な問題になれば、国家間で共通の認識を形成するには互いに相当努力(対話であるかは別にして)を要する筈だ。

異国の政治家が演説の中でどの程度「国際社会の共通認識」を使用するか知らぬが、日本ほどのことはあるまい。日本人(特に政治家)は「国際社会の共通語は英語」を勘違いして、英語を話さない人間を国際人とみていないのかもしれぬ。昨日たまたま政界随一の英語使いとされる河野太郎外相出演のテレビを観て改めて感じた。彼の発言の多くにこのフレーズがちりばめられていた。従って非国際人の小生には言わんとするところが全く理解できない。

アメリカファーストの大統領は「我が国と北朝鮮にとって、そして韓国、日本、中国、ロシア、そして全世界にとっても素晴らしい取引をして見せる。」と見得を切っている。千両役者が決め台詞に日本を入れてくれたことに安倍首相は大感激だろうし、この台詞は分かりやすい。総理にしても外相にしても、流石に「無用な対話のための対話」と「最大限の圧力維持」を少しトーンダウンせざるを得ないようだ。

当方は天井桟敷の遥か彼方、声は届かぬだろうが「いよッ!大統領!」と声援を送るのみ。

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