「まるせい」ご参考まで

タイトルの意味がお分かりですか?「政」の文字を〇で囲むことで、霞が関の官庁街では一般的に使われている言葉です。現役時代に役所絡みの仕事の際に度々政治家に口添えを依頼した経験がありますが、そのような依頼ごとを官庁側では「まるせい」と称するのです。仕事の成功率は案件ごとに異なるでしょうが、少なくとも悪くなったことは一度もありません。役所の担当者が不愉快に思うのも当然ですが、担当者がこれを無視したり、独断で拒否することはできません。

今にして思えば不思議ですが、それが組織の論理で、少なくとも直属の上司には「まるせい」案件が来たことだけは報告しなければならない筈です。役所の構造を単純化すると、担当係の上に意思決定者が係長→課長補佐→課長→局次長→局長→事務次官、と5人以上います。案件次第ではその上に政治家の政務三役がいますから、その中の一人が案件が来たことを知らずにいて、口添えをした政治家とどこかで顔を合わせて、礼なんか言われると返事のしように困ってしまいます。

肝の据わった担当者であれば、その場で要請を突っ返して、その責任を自分で被るでしょうが、幸か不幸かそういう人に巡り合うことはありませんでした。でも、ある局次長から「君、これは禁じ手だよ」と叱られたと言うか泣かれたというか、お言葉を頂戴したことがありました。今でも因果な商売をしたと反省しきりです。案件が一旦係から課長補佐まで上がってしまうと、その後はブレーキが利かないとしたものでした。霞が関官庁で実務を仕切っているのは課長補佐であるのは常識です。

霞が関には不文律があって、課長になれば民間の会社の社長クラスしか相手にしません。しがない営業マンが相手してもらえるのは精々係長までとしたものですが、「まるせい」になると若い営業マンでも課長補佐(年齢的にはこちらと同じ程度)に直接説明したりします。ここを越せばことは成るわけですから、こちらは「まるせい」を表に出さず下手に出ながら必死に説明をしますが、先方は背景事情の洞察に勤める訳です。

依頼ごとは全てお金が絡む話でありますから、案件に関しては最終的に財務省(昔の大蔵省)に持ち込まれます。ここにも暗黙のルールが存在しています。一般官庁から財務省への説明は補佐(主計局では主査)への説明は課長が、課長(主計官)への説明は局長が行かねばなりません。財務省は官庁の中でも格付けが他省庁は異なることが自他ともに認められているのです。役所のルールは一般人に解らなくても、厳然たるものです。

森友学園事件が「まるせい」事案であった客観的事実が次々に明らかになってきています。この事件では官僚の「忖度」が話題になっていますが、官僚が忖度することなどあり得ないことです。官僚は前例に倣うか、上からの指示以外では動きません。財務・国交・文部省だけに留まらず、検察庁にも総理或いは総理夫人からの「まるせい」事案が通用する様で、事件にならないだけのことだと思っています。

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