2016年8月28日日曜日

過去の話で済むのか?

不思議なことに最近になって福島県々南のある林業々者さんと縁が出来て、話を聞く機会があった。県南は特段の産業は無いが、終戦直後に植林された針葉樹が育って、森林資源が豊富な場所柄になっている。彼の事業はそれほど大規模ではないが、それこそ唯一の産業で個人企業として考えればそこそこと言ったところだろう。社長として10数人の社員とともに毎日元気に働いている。

ところが先週一夜食事をしながら話した時のことだ。お酒は進んでいたがこちら同様タバコは吸わないので「昔からですか?」の問いに対し驚くべき話が返ってきた。「いや、ごく最近まではヘビースモーカで1日に40~50本は吸っていたよ。ところが喉の調子がおかしくなって吸えなくなってしまったのさ。」

「あれはもう5年前になるか、2011年3月18日の早朝のことさ。役場からの電話で、浜通りの東京電力福島第一原発サイトへの緊急応援を要請された。この辺は津波の被害も無かったし、放射線も関係無しとされていた土地柄だ。そろそろ山仕事の準備に取り掛かっていたところさ。なんでも役場の話では、福一サイトは地震と津波の被害で足の踏み場が無いほど木材が散乱している。これを出来るだけ早く細かく断裁して整理をつけないことには人も車も入ることが出来ないので何とか協力願いたい。」

「この要請で山用の機材を車に詰め込み現場に急行した。そしてほぼ24時間近くぶっ通しで現場での作業をして帰宅することになると、東電の社員が来て、着ていった靴から身に着けていたもの一切、脱いで置いていって下さい。代わりのものは用意させて頂きます。までは分かったが、車やら山用の機材も全部同じとのこと。これには参ったよ。結局すべてのものを現場に置き去りにして家まで送り届けてもらった。もちろん車や機械については全部新品を買う金を支給してもらったし、手当は1週間分は貰ったと思う。」

「そこまでは今となれば笑い話で済む話だが、翌日から喉の調子がどうもおかしい。そうこうするうちに煙草がまずくて吸えなくなってしまった。今でもこの辺がおかしいのさ。」と喉の周りを手でなでる。酒を飲みながら妙にあっけらかんと話をするので、医者には通っているかなど、それ以上話を詮索しなかったが、小泉純一郎元総理がトモダチ作戦に参加した米兵の放射線被害を強くアッピールしている話を思い出した。関連して思えば福島県内の当時5歳以下の子供たちの追跡調査のこともある。

原発事故のアンダーコントロールが相当インチキ臭いことは周知のことではあるが、最高責任者が無責任に「アンダーコントロール」を口にすること自体、行政の無責任は想像以上に酷い実態であるようだ。

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