2016年6月10日金曜日

真珠湾攻撃と三本の矢

自民党に言わせると来月行われる参議院議員選挙の最大の争点は経済政策であり、デフレ脱却状態まで推し進めてきたアベノミクスを更にパワーアップして前進させるのか、4年前のあの混乱の状態に後退させるのかを問うているのだそうだ。只でさえ分かりにくい経済政策を、かくも文学的に表現されても凡庸な脳みそでは全く理解できない。一方野党は昨年成立した安保法制の撤回や、安倍さんが密かに企む憲法改正阻止を声高に叫んでいる。

野党の言い分には少しは具体性があるかもしれぬが、覆水を盆に返すことの難しさや相手の衣の下を訴えることの難しさを考えると、選挙の争点としての迫力はイマイチになってしまう。結果的には、よく分からないので棄権するとか、取り敢えずは現職の名前でも書いておこうで、相も変わらず自公政権が高笑いするとすれば残念極まりない。精々安倍政権の欺瞞性について思うところを書いて鬱憤を晴らすのみである。

先ず安倍氏の台詞で一番耳障りな「皆さんこの道しかないのです。」馬鹿なことを言ってくれるなである。安倍政権の経済政策なるものが破綻していることは多くの学者も指摘しているし、実際に恩恵に与っていると称する人には出会わないし、マスコミでも少数だろうと言っている。安倍氏本人ですら、一昨年暮れに大見得を切ったのは記憶に鮮明だ。「17年4月には経済状態を消費税増税に堪えうる状態に持っていくことを、国民の皆様にお約束することを断言します。」

お約束が果たせない場合に新しい判断を持ち出して、改めて国民の審判を仰ぐ。小学生なら「昨日宿題を出来なかったので、新しい判断として明日持ってきます。」と言えば先生は許してくれるかもしれない。しかし昨今は国のトップに居座る人間にも同様の理屈が通用するらしい。有り難い世の中だ。

一方政府は枕詞に「国際的」とつけさえすれば良いと思っているのかどうか、日本の経済環境や安全保障環境が様変わりしているようなことを口走る。その証拠のつもりかどうか、昨夜も尖閣諸島周辺に中国艦船が侵入したと大騒ぎをして見せてくれた。日中間に不必要な緊張の種を播いているのは日本ではないか。この問題は取り敢えず置く。

書きたいことは別のこと、成程世界情勢は日夜変化しているだろう。そんな時に「この道しかない」なんてことが許されるのだろうかである。先の大戦を考えれば、現政権の3本の矢作戦は帝国海軍の真珠湾攻撃に匹敵するだろう。両方とも最初の一撃で成功を収めたことが似ている。太平洋艦隊の撃破と円安・株高の誘導である。先の大戦では、この成功に気を良くして退くチャンスを失ってしまった。正に「この道しかない」で行きつくところまで行ってしまった訳だ。

現役時代にマネージメントを少し勉強させてもらった。企業存続の最大の要諦は「環境の変化への対応」に尽きていた。今の日本はまさにガダルカナル島に戦力を逐次投入しながら消耗戦に入っているようである。

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