2016年3月4日金曜日

読後感「中国で考えた2050年の日本と中国」丹羽宇一郎著

著者は民主党政権時代に民間人(元伊藤忠会長)でありながら中国大使に任じられたことで有名であり、年齢的には読者の小生とほゞ同年である。現在も時々テレビ等には出演して、どちらかと言えば政権を批判する側に立つので好感を持っているが、世の中の大勢からすれば評価は低い方に属するのだろう。本論から少しずれるが、同じ民主党政権で防衛大臣に任じられながら、政権が代わった途端に自公政権に寝返った森本聡氏とは大分スタンスが違う。

この読後感を書くために著者の経歴をウィキペディアでざっと調べてみた。ところが、2年半に及ぶ中国大使としての話題で褒められるようなことは一つもない。要するに伊藤忠時代から中国べったりで、国益を損ねたような話ばかりのようだ。本の冒頭に「尖閣に始まり尖閣で終わった」と著者自身が書いているし、北京滞在の約2年半とも書いているので、この間地方に一度も出張しなかったと言われるのも事実なんだろう。

しかしながら著者の中国に関する知識が浅いと断定していいものでもない。伊藤忠時代は食料関係部門を長く担当したことから、世界中を駆け巡ったようで、訪中回数は記憶にあるだけで数十回に及ぶとも書いている。食料は人間の存続に関する基本中の基本条件である。まして日本は食料自給率が4割を割る国柄である故、商社にとっても最重要商材であるだろう。しかも食料は生ものであり、長期の保存も難しいし、その補給については相当長期レンジで考えなくてはならないものである。

従って著者の考え方の基本にあるのは、タイトルにあるように、かなり長い先を見据えてものを考えることにあるようだ。地理的には互いに隣国同志で、国土の広さと人口は比較ならない程の差がある日本と中国。この本自体は2013年頃書かれたようだが、今から数えて35年後の2050年に互いの国がどうなっているか?目先に拘らず冷静に考えてみてはどうか。単に日中関係だけではなく、日米関係にしても今までの延長線上にあるのか無いのか。

時恰も、今にも中国経済が崩壊しそうとする人も多い。著者は態々「中国経済は崩壊しない」と言いう章まで設けて断言している。先のことは誰に聞いても分かりっこないが、長期スパンで考えてみることが必要であることだけは理解できた。旅の車中で読むに相応しく、読みやすくて分かり易い本だった。


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