2015年9月2日水曜日

原発問題の根本にある日米関係

福島の子度たちに甲状腺がんが全国平均の5倍以上と異常な値になっていることが、先月末の政府の発表でも明らかになった。しかし政府はこれが原発事故由来とは認めていない。調査をした医師の中には良心的な人も居るようだ。先日の報道によれば、原発事故に由来するものでないと断言はできないだろうと、チーフに噛みついている人が居た。昨日は北海道でも、福島第1原発事故の収束作業に従事した後に三つのがんを併発した札幌在住の元作業員男性(57)が、がんになったのは作業中の放射線被ばくが原因などとして、東電などに損害賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こしたそうだ。

現在、前立腺がん治療のためではあるが、毎日局部に放射線を浴びてその後遺症に苦しんでいる。放射線科の医師は事も無げに「前立腺が放射線で爛れ、むくんでいるのですから副作用は仕方ありません。」と言ってくれるが、がんが根本的に治っても放射線障害の後遺症は自然治癒を待つしかないとのこと。放射線被ばく被害者の心配はとても他人事には思えない。自分のことは兎も角として、原発事故が原因であることが明白な人たちに向き合う政府の姿勢が、不誠実に感じて仕方がない。

事故発生から既に4年以上経過しており、マスコミは毎日の情報に追われて未解決の古い問題に関する追求はどうしても疎かになって行く。メディアの特性でもあるので仕方ないかもしれぬが、世間には不祥事が頻発しているので、ついこちらを優先せざるを得ない。原発事故に関して近隣の当事者以外は問題意識が風化しつつあるのは否めない。そこに付け込むかのように、政府は放射性廃棄物処分場建設問題なんかもかなり強引な施策に転じつつあるのが見て取れる。

こんな流れを憂鬱な気分で考えていると、今日のネットで、目から鱗の記事を発見した。『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』著者 矢部宏治氏インタビュー記事である。詳細に書切れないので分かり難いとは思うがお許し願いたい。原発の問題は基地の問題と根っこが同じで、日本が一見主権国家のように見えながら、実態的にはアメリカに主権を踏みにじられている属国状態にあることに根本原因があるらしい。端的に言えば日米の間に「日米原子力協定」という条約が結ばれていて、これが「日米安全保障条約」と同じ働きをする仕組みになっている。何でもアメリカの言うなりにならざるを得ない。

即ち、「日米安保」による日米地位協定でアメリカが日本で好き勝手に振舞えるように、「日米原子力協定」がある限り、日本は原発推進の軛から逃れられない仕組みが出来上がっている。原発はアメリカの利権が深く関わる施設で、原発敷地内は在日米軍の基地と同じと考えれば分かり易い。この協定で、原発から放出された放射線物質も『放射能による汚染は法律の適用を除外する』と定められている。従って電力会社がこの手の訴訟に強気で臨むのはこの一文に依るとのこと。当然ながらこの協定は日本側からは破棄できないので、国民が脱原発なんていくら騒ごうが、この協定に縛られて絶対に実現できない。

1億を超える人民を支配しようとするとき、銃を突きつけながら四六時中張り付いたり殴ったりというやり方では、手間も費用もかかりすぎて非効率、だが法律で縛っておけば、その国の警察や検察が勝手に動いてくれるからコストゼロ、法律によって縛るのが最も効果的である。この仕掛けが完成しているのが現在の日米関係。俄かには信じがたいが、この記事を読んでいくと「日米原子力協定」で日本がアメリカの都合よい実験場、又はモルモットになっている可能性はかなり高い。そしてこのことは政府や高級官僚は百も承知で、その指揮下にある電力会社は大船に乗った気でいるらしい。

彼等は下級裁判所が原発停止を命じても、最高裁に持ち上げればその判決が引っくり返ることを十分分かっているのだそうだ。安保問題に於ける砂川判決『日米安保のごとき高度な政治性を有するものは審査権の範囲外』と同じこと。つまり、我が国の最高裁は日米間の条約について何も言わない。言えないのかもしれぬが、これではとても主権国家どころの騒ぎではない、属国か植民地そのものだ。

いつも書いている安倍政権批判すら何か虚しく思えてくる。知らぬが仏で我が世代は終わるのだろう。しかし子や孫はどうなる?彼等が近隣諸国に対して、先祖が行った侵略を謝罪を続けさせることについては抵抗は感じない。しかし、彼等が永遠にアメリカの奴隷国家の一員でいること強いて、被曝実験の対象になったり戦争の道具にされることを見過ごして善いものだろうか?

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