2015年8月23日日曜日

映画感想『日本のいちばん長い日』

前立腺がん治療が終わる来月の末までは病院以外に出歩くのを自主規制していた。病気との関係だけでなく、今月発売の「文藝春秋9月号」に立花隆氏が簡単な感想を書いていて、あまり好意的でなかったこともある。ところが、昨日のミニ同窓会に映画創りのプロがいて『日本のいちばん長い日』はよく出来た映画と折り紙を付けてくれた。立花氏は昭和天皇を演じた本木雅弘君には辛い点を付けているが、友人は褒めてくれた。

1967年の同名の映画には昭和天皇の正面からのショットが無かったが、本木君は果敢にこれに挑戦した訳だ。婆さんは映画を見る趣味はないが、こんな事を教えてくれて、それだけでも観る価値があるのでは、と背中を押してくれた。個人的感想を一言にして言えば「成程よく出来ていて、一見の価値が十分にあった」半世紀近く前の映画と原作が同じだから、ストーリーに殆ど違いはない。前作はモノクロで今回は勿論カラーである。音響も含め今回の方が迫力はある。

前作の印象は殆ど薄れ、三船敏郎の阿南陸相自刃シーンの印象だけが強いが、キャストがやたらに豪華だったような記憶がある。当時は未だ映画が娯楽の筆頭で、映画俳優を殆ど知っていたからそう思ったのだろう。引き換え今回はキャストについて言えば、本木雅弘以外に知っている役者が阿南陸相の役所広司と鈴木首相の山崎努程度だから比較するに少し無理があるが、どの役者もよくやっていたように思う。

この映画を見て改めて思ったのは、「1945年の8月15日をもって日本は変わった。」とよく言われるが、果たしてそうだろうかである。当時終戦に尽力した人たちは「戦に負けるが、日本は不滅」を信じていたに違いない。何故なら「戦に負けて軍隊も一旦なくなるだろう。しかし天皇制が残る限り日本は生き残った人間の努力で復活し、いつの日か軍隊も甦る」と思っていた節を感じた。であればこそ、責任を取るとして自決した人が多い。その殆どが天皇や国家に対する謝罪で、国民に迷惑を掛けて申し訳ない、と言った人はいないような感じもある。

映画的には感動して涙が出て来るが、昨今の安保法制騒ぎの最中に観たせいもあり、日本人の潔さは良いにしても、70年経っても余り変わらぬ何かをむしろ強く感じてしまった。安倍内閣の面々はその思想を忠実に引き継ぎたいのだろう。

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