2014年7月13日日曜日

負け戦の研究

遥か大昔「ベスト・アンド・ブライテスト」なる長編で難解な書を読んだことだけ記憶しているが、内容を全く思い出せない。著者がかの有名なニューヨーク・タイムズの記者デイヴィッド・ハルバースタムであることを知ったのは、その後10年近く経って、彼が「覇者の驕り―自動車・男たちの産業史」を発表した1980年代の終わりになってからである。何でこんなことを書く気になったか。

ひょっとしたら「ベスト・アンド・ブライテスト」に第2次世界大戦終結期における米国政府内部の動きに関する記述があったのでは、と思ったからである。これは完全な思い違いで、ハルバースタムのウィキメディアを検索すると『アメリカをベトナム戦争に導くことになったケネディと、その政策を継いでベトナム戦争を拡大したジョンソン政権の政治エリート達を中心に描いた「ベスト・アンド・ブライテスト」でその名声を不動のものにした。』と記述されていた。

第2次大戦末期にルーズベルト大統領が急死して、トルーマン氏が終戦時大統領になったこと、彼が原爆使用の命令を下したことだけは小生でも知っている。その他には、戦後になってダレス氏(国務長官)なる人が活躍していたこと、軍人ではマッカーサー占領軍総司令官以外にはアイゼンハワ―氏の名前などが、未だ幼かったにも拘らず記憶に残っている。当時日本は国連と戦っていたわけだから、米国以外の国の政治家も多分に関係しているのだろうが、取り敢えずは問題を簡略化するために米国1国に絞ってでも、知っておいてもいいかなと思うことがある。

このところ安倍内閣の右傾化に対して悪口ばかり書き募ってきたので、自分でも余りに芸が無さすぎると嫌気がさしてきたこともある。それに昨日今日のテレビを見たりしていると、些か六日の菖蒲の感無きにしもであるが、テレビ局の社員や識者が、政権の有様とメディアの意気地なさについて言い始めてくれている感もある。小生如きが老いぼれがき繰り言を百篇書くより遥かに有効だろう。そこでふと思ったのが、連合軍は何故(如何なる思惑で)日本の国体維持を許したかについてである。

日本に降伏を促すポツダム宣言に対して、日本は「国体維持」さえ認めてくれれば降参しますと返信、これに対して連合軍側は飽く迄「無条件降伏」に拘ったと聞いている。このやり取りをしている最中に長崎に原爆を投下されたりして日本は散々な目には合っているが、それはこの際おいておく。結果的には、戦争犯罪を裁く裁判所を設定するから、そこで決める形になって終戦と決まったらしい。しかし、結果的には日本の提示した条件が連合軍側で認められたことになった。

幾ら非国民的な小生でもこれを喜ばないものではないが、一寸不思議な感じも否めない。そもそも戦争とは、国家がその命運をかけて外国と戦うもので、敗戦国が無くなってしまって当たり前。同盟国のドイツとイタリアは、日本より先に敗戦を迎えたが、両国とも単に戦争指導者が死ぬだけではなく、見事に国家が消滅しているのだそうだ。長くなるが、7月5日付冷泉彰彦氏のメルマガ『from 911/USAレポート』第669回から孫引きをしておく。

以下引用
『ドイツの場合は、第三帝国は降伏した後に4つ、いやベルリンの分割統治を計算に入れると8つに分断され、完全に消滅をしたのです。その後、こうした分裂状態は、東西ドイツ、東西ベルリンという「4分割」に収束して行きましたが、その「4分割」というのは35年近い期間続いて、その後、西ドイツ(ドイツ連邦共和国)が東を吸収合併する形で再統一がされました。』
『イタリアに至っては、第二大戦末期の1943年に国王を中心としたグループが、独裁者ムッソリーニを打倒して連合国に降伏し、以降は対独、対日宣戦を行うことで、事実上の連合国側として大戦末期を戦ったわけです。イタリアでは、現在もムッソリーニやファシスト党に肯定的なグループが残っていますが、それでも国際社会として、現在のイタリアの「国のかたち」に「枢軸国の残影」が指摘されることはありません。イタリア自らが枢軸国から連合国側に転じた事実のためです。』
引用終わり

日本の場合だけは不思議なことに、組織として解体されたのは軍だけであり、終身雇用の官僚制は温存され、神御一人から象徴に格下げとは言いながら天皇の退位も、改元も無く、国体は維持されているようだ。その軍も何年も経ずに警察予備隊が編成されて自衛隊に至っている。改めて考えてみると、このことはとても不思議な現象だ。何も弥生時代の歴史を遡る話ではなく、高々70年前のことなので、我が後輩の人たちを含めて、少し詳しく事情を知っておくのも悪くはあるまい。

小生が勝手に考えているのは、日本人は本質的に戦争に向かない弱い人種であることを、彼等(特に米国)は知っていたのではなかろうか?である。若い元気な政治家諸氏には特に、よく調べてもらいたいものである。

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