原発事故報道 事実とタブーの狭間か

先日朝日新聞が、福島第一発電所元所長故吉田昌朗氏の政府事故調々書なるペーパーを独自入手してスクープ報道をした。延べ30時間近くに及ぶ聴取だった様で、きちんとした音源も残されていて、それを書き起こしたものらしい。担当したのが検察庁から派遣された検事だったことも明らかにされている。福一の事故は人災であり、当然ながら事件性があることを当時の政府関係者は勿論承知していたのだろう。この報道で世の中が大騒ぎになるかと思ったが、反響は意外に少ない。

昨夜のテレビ朝日の「報道ステーション」が少しフォローしたようだが、早く就寝してしまったので見逃してしまった。この調書は前政権下で作成されているが、何故か現政権も菅官房長官が「故人もこれを公表しないことを前提に聴取に応じた調書なので、今後も公表はしない。」と言っているらしい。今朝の新聞には小さく野党の誰かが政府に公表を求めたとは出ていた。朝日新聞が抜いた以上そんなことはどうでもいいが、問題となっているのは故吉田氏が語っている次の内容である。

「東日本大震災が発生した4日後の2011年3月15日に福島第一原発の所員達が所長の命令を無視して、10キロ南の福島第二原発へ避難撤退をしていた。撤退した所員の数は実に650人で、これは福島第一原発の全作業員の9割に相当する人数であった。」東電は勿論、何故か前政府も、現政府でさえこの事実を3年以上も非公開にして、情報を隠蔽していたことになる。そんなに隠すほどのことでもないように思うが、今後の原発再稼働問題と絡んで考えると、どうも相当不都合のようだ。

今日ネット情報で思い至ったのだが、海外からの見方である。我々は日夜多様なメディから多くの情報に接しているので、原発事故に関しても、そこそこの情報に接しているつもりになっていたが、世界的視点から見るとどうも偏った情報になっている可能性が高い。日本のマスコミは、政府と馴れ合いが大きく、国際的に我が国の評価を落としかねない情報に関して、政府の意を忖度して自主的に報道を控える傾向があるようだ。

政権のスキャンダルなんかでは、マスコミの多くが知っていながら報道しないタブーめいた事柄が幾つかあるやに聞くが、福一の事故に関しても、下らぬところで武士の情けだみたいことを言っている可能性もある。但しこの吉田調書は、誰もが知っていて書かなかったことではないだろう。朝日新聞のスクープに他社メディアのノリが悪いのは、これもタブーの一つに引っ掛かったか、と勘ぐりたくなる。

外国語能力に長けた優秀な方が沢山いる筈のマスコミでは、この朝日新聞記事に対する海外の反応は承知の筈だが、そんなことは全く報道されていない。幸い昨今はインターネットがあるので、こんなことを知った。アメリカの一流紙は日本政府への遠慮なんか無いから当たり前だが、やはり吉田調書の内容を大きく取り上げている。日本の原発では、いざという時に技術者がいなくなる可能性が大いにある。福一では現実に東電の社員の大部分が、所長の指示を無視して原発サイトから逃げていた事実を当時の所長が明言しているのだから問題だ。

このサイトを更に読んでいくと次の記事がある。『先月30日にカリフォルニア州政府は、福島原発事故で発生したセシウム放出量を計算してみたところ、チェルノブイリ原発事故の1.8倍に匹敵する18.1京ベクレルだったことが判明した。18京ベクレルという値は人類が今まで爆発させた原爆や水爆を全て足した数よりも桁違いに多く、州政府は「人間を含めた地球上の生物に悪影響を与えるかもしれない」と報告。』勿論詳細なデータが添えられている。
http://documents.coastal.ca.gov/reports/2014/5/F10b-5-2014.pdf

先月30日と言えば大分前のことになるが、少なくとも関連する報道に接した記憶が無い。昨日の福井地裁での大飯原発再稼働差し止め判決で、再び原発問題が議論されるのは結構だと思う。マスコミはおかしな自主規制をせず、事実を報道する姿勢を貫いてほしい。

コメント

トパーズ さんのコメント…
40年かかるという福島第一原発の廃炉計画の成否は原発作業員に委ねられて
いるというが、開始から3年目、すでに現場では作業員の不足が危ぶまれている。
被ばくで離脱を余儀なくされる熟練作業員や待遇が見合わず原発を去る若者など。
溶けた核燃料の取り出しが本格化するころには、作業員が急激に減るという結果
もある。原発廃炉は、実現不可能まで含めた早急な見直しが迫られていると思います。
senkawa爺 さんの投稿…
トパーズさん
コメントありがとうございます。
ニューヨーク市在住の貴女にまで、福一のことについてご心配頂いているのは大変恐縮に思うべきことです。
ところが肝心の日本では、福一事故処理なんぞやや等閑視されがちで、これから先の長い道のりを真剣に心配する風潮が感じられないことが残念です。

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