読後感「生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像 」中沢弘基著

普段の読書は睡眠薬代わりみたいもので、数ページ読んでは本を閉じ、気が向いた時に栞を挟んだページから読み始めるものである。しかし本著は最初から難しく、恐らく著者が意図するところの半分も理解できていない筈なので、途中から読むとそこまでに些か理解できていることもゼロになり兼ねない気がして、一気に最後まで読んだ。近来稀な読書スタイルであったことが第一の読後感である。

著者が小学校から高校まで同窓の友人であるので、2006年の4月に前著「生命の起源・地球が書いたシナリオ」を読んだ。それまでにも、この世に生を受け、子孫をになにがしかの伝承をする役割を意識することはあったが、自らが受け継いだ伝承や先祖への思いは精々100年前後止まりであったのも事実。著者の発想の壮大さに感心するとともに、それが無機質の粘土のような物から生まれたと理解して二度びっくりした記憶が残っている。

当時の書いた読後感を見ると「生命の起源について化学・生物学的なアプローチだけではなく、物理物質学・無機鉱物学・地学など非常に広範囲にわたる地球科学という視点で生命の起源にアプローチをした新説の解説書。地球の歴史と生命の誕生について、科学にはなじみの薄い人でも面白く読む事が出来る読み物。」書いている。

多分当時に比べて追加実験等で説得力が増している点はあろうが、自説に特段の変化は無いかもしれない。生命の起源が海とされることへの異論と、種の起源を辿っても一つの生命には至らぬであろうとの説は、より分かりやすくなっている気がする。論理と文章の組み立ても大分素人向きに整理されているので、思い切って一気読みしてしまえば、生命の起源も原始地球史と共に考えるべきだとする著者の意向は理解できるものと思う。

但し、この一気読みが味噌で、最初の数ページで出会うことになる熱力学法則、軽元素、分子→高分子、DNP、RNPなんて単語に紛らわされることなく読み飛ばされることをお薦めしたい。引用される学者の名前なんかは勿論そうだ。注釈も多いが、著者も無視して読み進めるよう配慮したと書いている。小生にとって唯一例外は手塚治虫氏の漫画「ジャングル大帝」が二ページにわたり紹介されていたことで、これには拍手を送りたい。

猿と人間は似ているかもしれぬが、魚と人間は生命の起源としては、全く別の根っこから進化していると考える方が胸には落ちやすいが、著者が説くところはそんなに新しい時代の話ではない。化石に残る原始生物と言えども精々5億年前程度、人類の発生なんぞは千年にも満たないそうだ。一旦45億年の昔に遡り、そこから5億年ほど過ぎたあたりの事件で生命の起源がもたらされて、それが複雑な生命の根っこになった筈というのが著者の推論。

天照大神と大国命のどちら先祖かな?なんて考えている単細胞からするとかなり進化した頭脳の持ち主である。

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