今日の昼飯は事務所の隣にある洋食屋でハンバーグランチ。親爺が一人で切り盛りしている店だが、昔池袋西口にあった大きな洋食店に長年勤めていただけに、結構美味いものを安く出してくれる。年齢は聞いたことが無いが多分同年輩だろう。土日も休まず店を開けるが、何故か開店が大体12時半頃なので、平日はめったに行かない。今日もプールから帰ってくると未だ開店の準備中、「おはよう」と挨拶だけして「後で来るからいつものハンバーグランチね。」と注文を先にして、一旦事務所に上がって、こちらも事務所を立ち上げて12時半過ぎに顔を出すと、丁度いい塩梅に昼飯が用意されていた。
650円のランチだが、ハンバーグは既製品とは違い、親爺が合いびきの肉を手で捏ねて造る。繋ぎの食パンの量が微妙で、これが一つの自慢らしい。焼き立てに特製のデミグラソースが掛かり、付け合せのサラダにはいつも薄く刻んだリンゴが入っている。他にわかめと豆腐の味噌汁、だしに浸した冷奴には白魚をまぶしているし、デザートはコーヒーゼリーと苺が一粒。結構いけている。食事している最中客が入ってこなかったので、親父とずっと話をしていた。勿論二人とも真珠湾攻撃大成功の高揚感は知る由もない。
しかし、戦後の苦労は共通している。話は先ず親爺の「4月から消費税が上がるので小さい飯屋は相当困るだろう。」から始まった。今でも野菜や小麦粉など食材の値上がりは相当きついらしい。ものによっては1年前に比べると倍になっている物さえあるようだ。マスコミが景気が良くなっていると言っているが、家庭の主婦の財布の紐は締まる一方なので小さな食堂が値上げが出来ない。仕入れが上がって値上げが出来ないと利益は」益々薄くなる。
「値上げをすれば」と言ったらそこがなかなか難しいのだそうだ。売れ行きが落ちて食材に残りが出ると、結局それが無駄になる。ならば安くても売ってしまえとの図式になるらしい。それで終戦直後の話になった訳。昔は八百屋にしても肉屋にしても魚屋にしても小さな店だった。ネギ一本、ひき肉50匁、醤油4合なんて買い方が可能だったが、今は大店舗に集約されているので仕入れ方も違ってくるのだそうだ。
段々話が進んで親爺が言った一言「今から見れば凄くけち臭い買い物のしかただったが、当時は誰も自分だけが貧乏だなんて思っていなかった。カレーライスに豚のこま切れが一切れ浮かんでいるだけで、今日はご馳走だと思った時期もあったよね。」これは全く同感で、流通上であれ家庭であれ、食材の無駄は罰が当たりそうな日本の現状だ。丁度二人目の客が来る直前の一言がこれだった「今の子供たちに<ご馳走感>があるのだろうか、多分無いのじゃないかな。」
贅沢は知っていても、本当の<ご馳走感>が無いとすれば今の子供は可哀そうかもしれない。
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