2013年9月4日水曜日

読後感「日本中枢の崩壊」古賀茂明著

2011年5月に出版された本の文庫版であるから、も大分前の著作である。読み終わりつつある時には、読後感を書くのをやめておこうかとも思った。しかし文庫版あとがき(2013年8月)を読んで気が変わった。やはり一読に値したような気がする。氏は既にテレビ等で有名な元経産官僚、本書はその現役時代(民主党菅政権時代)に出版されている。

著者は自らの経験を踏まえ、民主党が如何に拙い政権運営をしているかについて縷々述べている。特に著者自身も情熱を注いだ公務員制度改革法案について詳しい。自民党安倍総理、渡辺行革担当大臣のもとでやっと成立したものの、その後の自民党総理、更には政権交代の中で段々と骨抜きにされていくプロセスを通して、如何に官僚をコントロールが難しいかを説く。

政と官のもたれ合いで形成されている我が国の統治機構は、官僚組織の肥大化を招き、組織の暴走とその無責任な体質から抜け出すことが難しいらしい。著者自身もそれを何とかくい止めるべく抵抗をしたのであろうが、結局は儚く散ってしまったと言っても過言ではあるまい。このまま官僚主導の統治が続けば日本の経済力は弱まり、国際的発言力が無くなってしまうとの思いからだろう。

当時の政権に対して極めて厳しい事を書き、最終的には著者自身の政策論を書いている。端的に言ってしまえば、やや小泉政権が唱えたように、経済は民間活力を生かすために、一層の規制緩和と競争原理導入が必要との論理である。ここまで読んで、自民党に戻れと言うだけならつまらない、読後感を書かずにおこうと思った次第でもある。

しかし文庫版あとがきを読むと、現政権に於いて政と官の癒着が一層酷くなっていること、安倍政権への「期待」が「不信」へと変わり、やがて「崩壊」に繋がると締めくくっているので気が変わった。読者に向かって「立ち上がるのは今だ」と呼びかけているのが、やや虚しいが気持ちだけは分かるような気がする。

0 件のコメント: