2013年6月30日日曜日

読後感「エッセイで楽しむ日本の歴史」上 文藝春秋編

月半ばに3日ほど入院したので読みでのある本を買った。作家は錚々たる学者や物書きが百人前後、ボリュームも600頁もあるので読みごたえはある。下巻は読んでいないが、第1章の「日本人のあけぼの」は3万年前から2千年前頃(弥生式文化の始まった頃)に始まり、室町時代の1400年頃までの出来事についてのエッセイが並んでいる。少し前に出雲大社に関する新書を1冊読んで、神話と歴史の関係が少し理解できたつもりでいたが、改めて古代については理解が難しいと認識し直した。

縄文や弥生時代のことは、神話と外国を含め既に発見されている歴史的事実と一致している点がままあるので、余計ややこしい。私の時代は歴代天皇を数えられなくても叱られなかったが、数年上の人は初代神武天皇から124代昭和天皇まで諳んじるのが小学校半ばでの必須だった筈。とは言え、その当時の人だって、2千数百年に亘り皇統が続いているなんてことを信じていた人は多くあるまい。私も勿論その口で、今上天皇が第125代と言うことさえ忘れていたし、125代なんてインチキに違いないと思っていた。

しかし、そうとばかり言ってはいけない。皇統は、少なくともその辺にある過去帳や印刷された家系図と同列に考えてはいけない。根拠の薄い部分があるのは確かだろうが、天皇家は過去1500年くらいは、間違いなく国内に記録があって遡ることが可能である。その他に考古学的には遺跡もあるし、中国や韓半島の古文書もある。初代から30代くらいまでを、後の8世紀の政府がエイや!といい加減に書いたとばかり言いきれない。

中国の史書の3世紀に現われる卑弥呼が歴史上初めて出現した日本の王かとも思っていたが、中国の古文書によれば、1世紀2世紀にも倭国が漢や後漢に遣使をした事実が記載されているらしい。時の王の名前が何であれ、西暦50年前後には既に倭国が存在した事実を知るとびっくりせざるを得ない。しかし日本は血生臭い国で、中央の政権に於いても地方のボスどもの間でも、しょっちゅう殺し合いの闘いに明け暮れている。歴史は常に戦の勝者が書いたり、書き直している可能性を考えると、ますます分かり難くなるのも確かだ。

特に14世紀に入ると鎌倉幕府もおかしくなって、後醍醐天皇から南北朝時代が始まる。ここがまた大変分かり難くく、現代の皇統との関係でややこしい。幸か不幸か上巻は丁度この辺で終わっている。日本史については、断片的な事件について不正確な知識があるだけだが、その繋がりが分かってくるのは面白い。しかし15世紀以降は正に下剋上の時代、ここから先は下巻になるが、それを読む機会は当分なさそうでもある。

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