2012年11月8日木曜日

風化させていいのか

東京電力は昨日2015年までの中期経営計画を発表し、その中で被災者への賠償や廃炉、放射能を取り除く除染作業などの費用が想定した五兆円を上回り、十兆円を超える可能性があるとして、政府に新たな財政支援を求める考えを明らかにしたそうだ。どのマスコミもこれをニュースとしてサラッと流している。

たまたまアメリカ大統領選挙の開票結果や田中文科大臣の発言修正問題が重なっているので、今のところこの発言に疑問や異論を唱えるメディアは見当たらない。このニュースに対して憤慨している人はどのくらいいるだろうか?毎月の支出を細かにチェックせざるを得ない一般市民は最近電気代が上がっていることには気が付いている筈。日本人は善い人が多いので、もっと節電しなくては程度の話で、問題がどこにあるのか追及はしないのが一般的だろう。

婆さんが猛烈に怒っているので、家計に関わりない小生が代わりに取り上げたい。冷静に考えれば東電の経費がかさむのは当たり前で、最終的には国家、国民の税金で尻拭いせざるを得ないのも仕方がないことかもしれない。であれば、何故一旦破綻処理をしなかったのか?会社そのものは倒産した訳でもないので、経営者や社員の皆さんも未だに一流企業人として、それなりの高禄を食んでいらっしゃるようだ。だから我が家では僻み根性で「盗人猛々しい」みたい言い方になってしまう。

そんなことより深刻なのは、被害にあわれている当事者の皆さんことである。マスコミは事故と簡単に書くので、被災していない首都圏に住む我々は東電も同じ被害者かのような錯覚を起こしかねない。この辺にマスコミの取り上げ方の怖さがある。被災された方は筆舌に尽くしがたい苦しみに未だに直面している。故失くして故郷を追われ、着の身着のまま首都圏の狭い部屋に追い込まれたお年寄りの話を聞く機会があった。

一時帰宅で帰った我が家は座敷中ネズミの運動会だったそうだ。政府や県、市町村に至るまで対策は不可能とのつれない返事で、たまりかねて警察に相談したら「泥棒は捕まえるが、ネズミを捕まえることはできません。」との返事。ここだけ聞いていると笑い話になってしまうが、実態的には泥棒の被害もかなりらしい。政府から沢山金を取って被災者には金さえ払えば文句はあるまい。この東電に姿勢に、やるべき事は全て民間企業の東電に任せて責任は負わない官僚、更に出銭をけちる財務省。いったい事故の責任はどこにあったのか。

マスコミだって全く関係ないとは言えないだろう。しかし今となると福島のことではニュースにもならないので、大飯の活断層や原発再稼働など論争があることのみを喜んで記事にする。昨年3月の原発事故は既に風化していると話すお年寄りの目には涙が浮かんでいた。

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