2012年1月13日金曜日

読後感「デフレの正体」藻谷浩介著

10年6月の出版で、当時何人かのブログで好評であったことを思い出して手にしてみた。日本の経済状況が一昨年の夏以降改善している様子もないし、景気対策だのデフレからの脱却だのの議論は相も変わらずで、対策にも目新しいものは何一つ聞こえてこない。経済評論家や政治家にも評判だったと記憶する本だが、読んだ人間は読書から何を学ぶのだろう。

書かれている内容は、ど素人の小生にもよく分かる。国会では丁度来年度の予算審議を前に、景気回復が先か消費税が先かとの議論が活発になっている。景気回復論者の論は思い切った公共事業の展開して経済成長を図ったり、日銀券の発行を増やして緩やかなインフレを起こすことで、デフレからの脱却をと言った論が主流だろう。著者が述べるには、そんなことをしてデフレからの脱却なんか出来る筈がない。

何故ならば多くの経済学者の現状認識そのものが間違っているからである。所謂マクロ経済学(どんなものか知らないが)の体系自体が日本の現実にそぐわないので、彼らがもてあそぶ数字自体が日本経済の実態を見誤らせている。とのことだ。経済を動かしているのは景気の波でなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減。日本は団塊の世代が定年を迎えるこれから益々経済が縮小するのは自然現象でやむを得ない。

この自然現象を前提にしない限り、政策も対策もすべて的を射ないものにならざるを得ない。目から鱗の内容が多いのだが、例を挙げると、先ず景気が良いとか悪いとか、確かにこちらには実感がないケースが多い。実はそれももっともな話で、政府や日銀が発表する際に使用する指標そのものが実態にそぐわないものが多いことがよく分かる。

景気が悪くても貿易収支は伸びていたり、就職者数が増えていたりするのは生の統計をチェックすればすぐ明らかになる事だ。政治家は仕方ないとしても、その発表通りに飲み込む学者や評論家の検証能力は一体どうなっているのだろう。地域間格差なんかも率で判断するととんでもない間違いになるらしい。一番疲弊している筈の沖縄が変に活気があったりする事実も指摘している。

この本に少し期待したのは、「デフレからの脱却」が可能なのか?結論的に言えば可能と言えば可能だが、そう簡単な事ではないも分かった。一見、素人が考えると成程と思う事ばかりだ。未読の方に是非お勧めしたい。


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