読後感【「権力」に操られる検察】三井環 著

検察の不祥事が続いている。その原点らしい事件に著者三井氏(元大阪高検公安部長)の検察裏金の告発事件がある。2002年4月週刊朝日とテレビ朝日が三井氏による実名実態スクープを決めたのだが、番組収録3時間前に肝心の三井氏が大阪地検特捜部に逮捕されたために、未だに正式には認知されていない事件である。著者はその後裁判で1年8カ月の有罪判決を受け、服役の後、昨年1月に満期出所をしている。

出所後3冊出版をしているが、この本は本年6月時点で脱稿して7月末に出版されたものである。内容的には裏金問題よりも、現在検察による起訴事実が疑いの目を以て見られている5件の大事件について、三井氏の見立てが書かれている。5件の事件とは「鈴木宗男事件」「日歯連、自民党への献金事件」「朝鮮総連ビル詐欺事件」「小沢一郎事件」「郵便不正事件」(これについては村木さんの判決以前)

著者の見立てでは、何れも検察の捜査から起訴に至る道筋が何処かで恣意的に歪められ、公正が著しく毀損されているとして、問題点を具体的に厳しく糾弾する形になっている。そしてその原点が、著者の裏金告発にあったと言う。三井氏が告発を決意した裏金とは、検察庁が税金である調査費(当時は年間5億円、現在は7500万円)を裏金としてプールして、高級検察官僚の私的流用が恒常化していた事実である。

そもそも彼がこんなアクションを起こすきっかけが、組織内部の出世争いの私怨であった事も正直に書かれている。しかしこんな事で組織の論理をぶち壊されて、思惑どおりに人事が出来なくなることに危機感を抱いた当時の検察トップが、時の(小泉政権下)実力者で元官房長官の後藤田正晴氏に泣きついて予定通りに人事を可能にし、同時に騒ぎを起こした著者を抹殺した。
又、その目くらましに使われたのが鈴木宗男事件と言っている。

検察が政治との一線を超えたこの事を著者は「けもの道」と称し、爾来自民党政権との間に借りが発生、この借りを返したのが「日歯連事件」と位置付けている。他章も当然そうだが、検察という組織の論理からかなり無理な捜査が行われる実態は、当事者が言うのだからかなり信憑性が高い筈だ。昨今問題になっている検察不祥事の根っこを理解する上で非常に役に立った。

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