2010年9月15日水曜日

読後感「ITは人を幸せにしない」 志村史夫 著

著者は62歳の物理学者、若い時からコンピュータの発展に不可欠な半導体結晶の研究に従事して48歳の時永住の覚悟で渡米、しかし10年後に思うところがあって帰国したと述べている。

著者自身はIT技術の発展に大いに貢献もして来たので、その便利さ等は一般人以上に百も承知である。しかし彼は冒頭に言う、「現代人の三種の神器であるパソコン・携帯電話・インターネットは生活上の利便性は高めたが、物質的豊かさや便利さと裏腹に文明人のつもりの我々は精神的病魔に冒されたり、全ての生物の生活基盤である地球環境を破壊しつつある。」彼はもともと東京駒込の出身であるが、アメリカから帰国してからは静岡の田舎での生活を楽しんでいるとの事。

以前も雑誌で彼のエッセイを何度も読んでいるので、小生の日記でも書いたかもしれない。物理や医学を極めた人程、人知を超えた偉大な力に畏敬の念を抱く傾向が強いようだ。これは宗教と密接に関係してくるが、著者が何かの宗教を特に肩入れしている訳ではない。単に巻末において文明人に対し、奢りを排して宗教と補完的な関係をもつ事が必要では、と示唆を投げかけている。

内容は見出しから「ITが人間を機械化する」「ITは人間を鈍化させる」「ITによって失われた"自然の時間"」「命や健康が商品化される危険」等があり、最終章には「本当の幸せ、豊かさのための13のヒント」を提示している。改めて成程と共感することが多い。

小生も仕事の関係もあって、毎日パソコン・インターネットとは切っても切れない生活をしているし、携帯電話も些か旧式のようだが持つ事は持っている。著者のようにカントリーライフを生活の中心に据えるまではいかないが、著者が力説する「小欲知足」のライフスタイルで人生を満足したいものだ。

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