2010年8月10日火曜日

読後感1「ロング・グッドバイ」レイモンド・チャンドラー著 村上春樹・訳
読後感2「ファイナル・カントリー」ジェイムズ・クラムリー著 小鷹信光・訳

暑さに参っている訳でもないが、軽い読み物をを読みたくなって、図書館からアメリカの探偵小説を2冊借りてきた。

1.昔聞いたか見たようなタイトルだと思ったら、著者は1888年生まれで、作品は1953年に書かれ、日本語訳出版(清水俊二訳)が1958年とあるから立派な古典である。しかも、本書は2007年7月に出版されているが訳者がノーベル賞候補ともされる大作家の村上春樹氏である。村上氏は後書でこの翻訳を非常に喜んで受けたと書き、彼自身高校生ぐらいの時からこの小説を繰り返し読んで、少なからずの影響を受けていると告白している。

小生も一時は早川書房のあの独特の版形のミステリを読み漁っていた時代があるので、著者の名前やタイトルぐらいは知っていて当然かもしれない。読んでいるうちに主人公のフィリップ・マーローなる探偵の名前も聞いた事があるな、と思い始めたが、内容は勿論新鮮で楽しく読む事が出来た。

ロスに事務所を構える孤独で貧乏ではあるがタフな私立探偵が主人公、あるホテルの玄関先で変な酔っ払い男を介抱する事になって物語が始まり、上流社会の殺人事件に巻き込まれてしまう。しがない暮らしの探偵稼業だが妙に正義感があるので、「関わるな」と外野から言われると金にもならないのに、一寸知り合っただけの男との友情で深みにはまっていく。

登場してくるのはロスの億万長者やセレブ達だけではなくて、ギャングに警察、新聞記者に、料金次第でどんな事でも調べてしまう調査機関だったり、セレブのに奉仕する怪しげな使用人と手の込んだ道具立てになっていてミステリとしても十分な読み応えになっている。半世紀以上前の作品でも流石アメリカ、日本ではこういった格好いい小説は書けないだろう。

一言付言するなら、つい1年ほど前だったか村上春樹氏の本を初めて読んだ。(「IQ84」を2巻まで)思い出してみると、成程この本の影響を受けている事が分かったような気がする。

2.こちらは1939年生まれで2002年の作品だから前者に比べれば現代的な作品とも言えるが、主人公の探偵さんが朝鮮戦争時代の事を語ったりしているので、作者の歳が分かる。日本にはこういった類の探偵は存在しないと思うが、アメリカには海兵隊上がりで、殴り合いや拳銃の扱いに長けて本当にタフでなければ勤まらない職業が実際に存在するのだろう。

こちらの探偵も正に絵にかいたような海兵隊上がりのタフガイで、モンタナ出身であり、故郷に帰りたいと思いながらも、テキサスで私立探偵の資格を取って私立探偵を開業している。これには訳があり、親から遺産で受け取った金にやばい金(麻薬がらみ)があり、こを洗浄する必要に迫られてテキサスで酒場を経営を始めているからだ。ここら辺は日本人には想像もつかない話だから面白い。

この探偵さんが半端仕事と称する失踪人(逃げた人妻)調査でテキサスのあるバーに行った事から、バーでギャングのお礼参りみたい殺人を目撃して話が始まる。上記「ロング・グッドバイ」はロスが舞台だがこちらはテキサスやラスベガスのあるネバタ州が舞台、警官の粗っぽさは似たようなものだが、こちらは登場人物全てが銃の使い手みたい印象がある。時代が新しいので若干IT技術に絡んだ話も出てくるが、基本はハードボイルド、アメリカ版チャンバラで、こちらも結構楽しめた。

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