2010年7月8日木曜日

読後感「デフレ不況 日本銀行の大罪」田中秀臣 著

前々から何度も書いているが、経済学が分からない。諸説あって、誰かの本を読むと、その時は成程と思うのだがどこまで信用できるかは自信が無い。著者についてはリフレーション論者としてそれなりに知名度もあり、ウェブの世界でも活発に活躍しているそうだが、小生がその説に接するのは初めてである。

菅元財務相がデフレ宣言をしたのは民主党が政権を取ってからだからそんなに古い話ではない。著者はここ20年来の不況(途中一瞬の回復気配はあったが)は日銀が適切な金融政策を取らなかった所為であり、とっくにデフレスパイラルに入っていると端的に断罪している。日銀は日本銀行法に定められている理念「通貨及び金融の調節を行うに当たって、物価の安定を図る事を通じて国民経済の健全な発展に資する」を放棄して、官僚的な自己保身に汲々とするだけで国民経済の悪化について極めて無責任という趣旨である。

勿論国民経済の立て直しは金融政策だけではなくて財政政策との協調も必要である。もっと早くから緩やかなインフレターゲットを設定した政策転換を図るべきであったし、今からでもその政策を取るべきだ。が著者の言わんとするところだろう。なのに日銀はいつも、取るべき政策手段は既に目一杯実行している、との言い訳に終始している。しかしやるべき事は何もしていないのだ。やったにしてもばかりである。

著者が言わんとする政策的な事についての妥当性は判断しかねるが、一つ共感を覚えるのは、日銀の幹部が経済の専門家ではなくて経済学に基づく十分な見識を持ち合わせない事である。日本の場合殆どが法学部の出身であるが、先進諸国の中央銀行幹部は殆ど経済学の泰斗のようだ。要するに官僚だから、過去についての反省が伴わない無謬の原則で、意味不明の言い訳を並べ辻褄だけを合わせてその場をしのぐ。

この行動様式は正に事実だろう。日銀マンの行動様式について非常に親しい人間から同様の話を聞いた事がある。著者が力説するリフレーション政策が正しくないとしても、日銀マンの根本的ビヘビアが治らない限り日本の経済が良くなる筈もない。

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