2010年5月11日火曜日

読後感「日本辺境論」内田 樹 著

40年前に発売になったイザヤ・ペンダサンの『日本人とユダヤ人』を読んで以来多くの日本人論を読んできた。著者によるとこれが日本人の特徴らしい。何が面白くてか知らないが、酔っぱらって手相を見てもらうようなもので、言われてみると確かにその通りかもしれない。

中には新渡戸稲造のように、日本人の精神に影響を与えているとされる「武士道」を外国人に分かりやすく解説する、のように意味するところが分かりやすいものもある。この書は日本人の根源的な思考に「自らを世界の中心から最も外れた辺鄙な場所に置く」意識が存在すると言う。従って当然のことながら日本人全体が言わば田舎者的な劣等感を持っているので、古来文物にせよ精神にせよ舶来品を有難がるのだそうだ。

著者はこれが良いとか悪いとい言う事では無くて、日本人のDNAと断じ切っている。「日本とはなにか、日本人は如何にあるべきか」についての正解を知りたがる世界でも珍しい人種らしい。この事も確かにくだらない事かもしれないが、個人的にはある程度同意するしかないだろう。くだらないから面白い事も書いてある。

国名「日本」国旗「日の丸」国歌「君が代」成立の由来に関しての記述だ。
ある政治家が「国歌を斉唱したくない人間は日本から出ていけ」とテレビで大声を張り上げていたが、彼は憲法改正を掲げている。これは大いなる自己矛盾で、国旗や国歌は政治的目的で政治が制定しているものだから、憲法に従いたくない本人が言ってはいけない言葉らしい。

少し笑ってしまう。著者は東大仏文学のご出身で現在評論家・武道家として八面六臂ご活躍らしいが、理屈と膏薬は何処にも引っ付くものだなあと半ば感心もした次第。


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