2010年4月20日火曜日

読後感「衆愚の時代」 楡周平 著

著者の名前は知らなかったが、本の帯に「国民の皆さま」が国を滅ぼす。「弱者の視点」より「社会人の常識」を取り戻せ!と書いてあったので何気なく買ってしまった。小冊子だが現代世相の1面を切り取っていると言えよう。確かに高齢化とか就職氷河期と言われ、ここ20年くらいで社会の様相がすっかり変わっているが、具体的には良く理解できていなかった。

この本を読んで少し分かって来たような気がする。即ちグローバル化による産業構造の変化によって、日本の製造業が海外に出て行った結果は何であったかと言う事。我々が農林漁業からの脱皮を目指して営々と努力した結果、現代の比較的裕福な社会を築き、その結果もたらされているものは何か。食物の供給を海外に依存して、多くの市民が豊かな生活を享受する現在、貧富の格差が激しくなるのは当たり前ではないか。

要するに我々年寄りは後や先の事は考えずに、ひたすら物欲を満足させるべくここまでやって来たわけである。それが現代の世相を生み出しているのだから仕方が無いでしょう、と言う訳である。確かにごもっとな指摘かもしれない。特に現代の若者についての観察「欲望を知らない子供たち」は的を射ている。先日も日記で、孫と一緒にスーパーに行っても物を欲しがらない、書いたばかりだった。お利口だと喜んでばかりはいられない状況を再認識できた。

但し、著者が未だ小生よりかなり若いせいでもあるのだろう。シニアに対する提案部分については少し疑問が残った。今後シニアを社会的にどう扱うかは、姨捨伝説以来永遠のテーマであろうが難しい問題である。


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