著者についてはテレビで何回も見ているので、嘗てアフガニスタンで「武装解除」の仕事をした事は知っていた。しかしどこの依頼又はどんな資格で行ったかについては深い関心は持たなかった。この本によると日本政府の依頼だったそうで、日本政府も結構あじな事と言うかやばい事にもコミットしている事が分かった。
平和日本の申し子みたいなもので戦争とか紛争と全く無縁の世界に生きてきたので、現実の戦争んついては全くイメージを持つ事が出来ない。しかし著者も指摘する通り、現実世界には国家間、種族民族間或いは紛争の種はもっと存在するのだろうが常に戦争(人間同志の殺し合い)が行われている。当然紛争が一旦終息した地域に法と秩序を回復させる作業が必要になる。多くの場合この仕事を行うのは主に国連で、国連平和維持軍やNGOが実務にあたっているようだ。世に紛争のタネが尽きないので、紛争とその後の開発を請け負うNGOが一種の業界化して、肥大の一途を続けているのも皮肉な事のようである。
著者は早稲田の建築科の出身でありながら、生い立ちの少し変わっているせいもあり、面白い性格で大学卒業早々に建築家志望を捨ててインドに留学して、ここで偶然であろうかコミュニティーオーガナイズ技術を習得してNGOの世界に入っていく。先ずアフリカのシェラレオネを皮切りに、東チモール等所在地すら分からないような辺境の地で長年紛争の後処理に従事、40歳代後半に日本に帰国、やっと立教の教授に落ち着いたところですぐに(2002年)外務省から声が掛かって、アメリカがタリバン政権をやっつけた後のアフガンで何ができるかの調査を依頼される。
これまで著者はアフガンについては何も知らず、関心も持っていなかったようだが、この調査をきっかけにして日本政府がアフガンでアメリカに対して協力姿勢を示すための片棒を結果的には担ぐ事になる。それがNGOとしてシェラレオネ等で経験を積んできたDDR(武装解除、動員解除、社会再統合)と言う訳だ。しかし日本の官僚と政治家がこの実際的なプロセスを知らないのは仕方が無いとしても、彼等には日本が海外の紛争地域にどうコミットすべきかについての定見が全くなく、ただ同盟国のアメリカさんについていけばいいという考え以外に無いことを示唆している。日本に於いても個人的には著者同様にNGOとか、もっと違う立場でも国際的な貢献をしている人は沢山おられるようだ。
しかし日本のお役所仕事はそういった人たちの考えを旨く吸い上げる事が出来ないし、更にいけないのがマスコミで、著者は日本のマスコミについて先の大戦当時の大本営発表に擬えている。同時に海外への軍隊(即ち自衛隊)を武器傾向で派遣に反対する立場を明確に書いている。私は冒頭書いたように紛争や戦争の実態について全く知らないし、憲法解釈などにも全然興味はない。しかし2004年に発行された本書を読んで日本人の国際貢献、もっと狭い範囲で言えば自衛隊の国際貢献のありようについて考える上で大変参考になった。
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