2010年1月19日火曜日

「真っ赤なウソ」 養老孟司 著  PHP文庫

著者は東大医学部の教授であったから当然お医者さんであり、専門が解剖学であることはよく知られている。私もベストセラーになった「バカの壁」以来ときどき愛読している。先週書店でたまたまこの本に出会って購入した。生物とか化学の科学者の随筆的読み物には「科学的な事を幾ら突き詰めて探っていっても、全ての謎が解き明かされることはあり得ない。そこに宗教の大きな役割がある。」とするものが少なくない。

この本もその趣旨だと思う。科学者は真実を追求するのが仕事ではあるが、なかなか極めることはできないのではないかとしている。著者は専門とは別に昆虫収集が有名で、自然界の中でももっとも小さなもの熱心に集めている「よく月に届くロケットなんかを作って科学の力を自慢しても大したことはない。悔しかったら蚊でも蠅でもいいから1匹作ってみろ。」てな毒舌をあちこちで言っている。

要するに自然に逆らうのも程々にしないといけないと言う事だろう。人間の能力については脳みその話を書いているが、脳みそなるものは神経と血液の塊なんだそうだ。考えてみれば当たり前かもしれないが、個性的な脳みそなんかあるはずもないと聞くと嬉しくなってくる。本のタイトルにもなっているが世の中の真実と嘘、これもぎりぎり突き詰めても実際に突き止められるものではないことも暗示している。

だから究極の嘘みたいな話で「宗教」の必要性があるのだそうだ。この辺の事は私のような凡人には解説が困難であるが、薄っぺらな本にしては奥が深いし2度読みしてみたいなと思うくらいだ。

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