2009年11月17日火曜日

「政権崩壊」 武田一顕 著

ラジオを聞かない私にとっては聞いた事のない名前の政治ジャーナリストである。毎日購読しているテレビコメンテーターの勝谷誠彦氏のメルマガで絶賛されていたので早速読んでみた。著者はTBSラジオ10年キャリアの国会記者との事だから知る人は知る存在ではあるのだろう。確かに面白い。

テレビではよく毎度おなじみの元〇〇新聞記者の爺くさいコメンテータが、若手の政治家を相手に偉そうに「俺の方が余程物事を知っているのだ。」としたり顔で昔のことを引き合いに出しながら説教じみた解説をしている。いつもこんなシーンを見ながら「いい加減にしてくれ、もっと参考になる意見は無いのか?」と思っていたところだ。

今回この本を読んでこのフラストレーションの寄って来たるところが分かった。この本に惹きつけられるのは、内容の全てが著者即ち記者が現場で体験、体感している事実に則して記述されている事にあるのだろう。著者の考えを自分の言葉で表現しているので非常に読みやすく分かりやすい。書かれている事はわずかここ1年そこそこの間に起った事で、全てテレビ新聞等を通じて記憶に残っている事がらである。しかしそこで報道されない些細な事からいろいろな事が見えてくる。

著者は1966年生まれとあるので未だ40歳を少し超えているかとかなりお若いようでもある。報道されていない事を気負いもなく多分正直に坦々と書かれているだけだ。しかし読者であるこちらかからすると、自民党が帝国陸軍の末期のように自ら敗戦の原因を作り、終戦を迎え烏合の衆と化していく様(これは著者が小沢一郎と対談をした後に持った感想である)にいちいち初めて納得いく思いがするのである。

著者は歴史も勉強しているようだしかなりの中国通のようでもある。首相の中国訪問には必ず同行するようだが、旅費の関係があって首相と同じ飛行機に乗れない事があるらしい。こんなちょっとした事実関係が新鮮でもある。TBSも何故ラジオ局に配属しているか分からないが、取材費がふんだんにない場所にいる事が逆に読み応えのあるレポートを生んでいるのかも知れない。

テレビ局もこれからは現場を離れた死にそこない爺の無意味な解説を公共の電波で流すのではなく、この著者のような若い人の解説も重用すべきだろう。

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