2009年9月15日火曜日

甲斐駒ケ岳登山



65歳から高齢者登山を始めて早5年、単なる思い付きで始めた割には結構はまっている。とは言っても体力は日に日に衰える一方なので、高い山は出来るだけ早いうちに登りたいと言う気持ちが強い。今年は既に北アルプスに2回行く事が出来たが、南アルプスには未だ行けていなかった。南アルプスの峰々は北アに比べると姿が優雅で雄大なので、もっと行きたいも気持ちもあるのだが如何せんアプローチが長すぎて気軽に行けない憾みがある。しかし先週知り合いのブログで甲斐駒ケ岳だけであれば土日1泊でも行く事が出来ると言う事が分かった。


思い立ったが吉日で早速ベースとなる仙水小屋に連絡すると、12日の土曜日は満員だと断られてしまった。ところが良くしたもので、その翌日得意先の担当者が9月14,15日と夏休みを取るとの連絡が来た。こちらも夏休みは未だ1日しか取っていなかったので、これ幸いと14日を夏休みとして13(日)、14日(月)で甲斐駒登山にする事にした。例によってがってん太郎の悪い癖で少しばかりの失敗もあったが、最高の天気に恵まれ、南アルプスの息をのむような素晴らしい景観を十二分に楽しむことが出来た。


十三日の日曜日、目的地の仙水小屋はバス停から僅か一時間足らずの行程なので朝もゆっくりで8時のスーパーあずさで甲府へ、ここから路線バスを乗り継いで12時45分登山口の北沢峠に辿り着く。ここから仙水小屋までは僅か1時間足らずの筈だ。ここで悪い癖が出た。実はこの小屋へ行くにはここから少し降って別の登山口から登り始めなければいけない。それを目の前に甲斐駒ケ岳登山口と案内板が見えたので、これで間違いないと思いこんでしまった。


1時少し前から登り始めると、どんどん降ってくる人クロスする。3,40分すると降ってくる人が不審そうに「これからどちらまで?」と聞いてくるようになる。こっちは「今日は仙水小屋です」と答えると、最初のうちは「はあ、そうですか」で済んでいたが、1時間以上歩いても小屋の気配が感じられないのでこちらもだんだん不安になって来た。地図を取り出して見ると明らかに登山口を間違えている。明日下山で使うつもりでいたルートを逆に登っているのである。標高を確認すると既に2500m近い。


しかし来る時の車中、1時間足らずの歩きで2時前に小屋に着いたら今日はどうしよう、と思案していた事もある。天気も良いので駒津峰経由で仙水小屋に行く決心をする。少し頑張れば明るいうちには小屋につくだろう、と何時ものいい加減さ。2時半頃先ず双児山に到着、下山途中に休憩している人達から相当奇異と同情を持った目でで見られる。ここから駒津峰は少し降って登り返しになる。3時20分駒津峰に到着、当然の事ながら人っ子一人居ない。既に標高は2700mを越え眼前には甲斐駒ケ岳が迫り、遠方の山々の夕映えとあいまって何とも言えない美しさを一人占めである。


今日この素晴らしい天気でこれだけの景色を堪能できたのだから、明日は途中温泉にでも入ってゆっくり帰る事に予定を変更して降り始める。双児山であった登山者が「駒津峰からの降りはかなり急です。」と同情をもって話してくれた通りかなり急である。山小屋の夕食は5時と相場が決まっているので、何とかそれまでにと気持ちは焦るが、足場は相当悪くて危険である。途中1回水飲みをしただけで小屋に丁度5時に到着。しかしこの小屋、何と5時で夕食が終わってしまっていた。「予約の小林さんですね?今食事を用意しますから。」「取り敢えずビールを一口飲ませてくれ。」と頼んで後は一人だけで食事。


小屋のご主人が言うには「消灯は7時、明日の朝は3時半に点灯して4時から朝食です。」との事。「だから時間がたっぷりありますから、帰るなんて言わないで折角ですから山頂まで行って下さい。駒津峰は直登だから標高が稼げて登りは楽なんです。明日は天気がもっと良くなりますよ。」この言葉で又気が変わる。


14日月曜日3時半小屋のご主人が来て真っ暗なのに「今日は穏やかで最高の天気です。」との事。確かに星はあるが雲も風もない。朝食が済むと20人位の客がどんどん出て行く。ヘッドライトで歩くのは未経験自信が無いと言うと、ヘッドライトが無ければ誰かの後を付いていけばいい、森林地帯を抜ける頃には明るくなりますよ。と気楽な事を言ってくれる。仕方がないので意を決してザックの中からヘッドライトやフリースを引っ張り出す。5時、宿泊客最後になったが出発、成程小屋の主の言う通り急坂は登りの方が楽かも知れない。1時間半も歩くと夜が明けて、南アルプスの山々が暗闇の中から姿を現し、"Good Morning!"と、昨日とはまた一味違う姿を見せ始める。


7時前には駒津峰に到着。大分前に出発したお年寄りと途中からほぼ一緒に登ってきたが、昨日小生がここで考えたように、「山頂はもう何度も登っているので、これ以上はは無理をせずここでゆっくりして降ります。」との事。こちらも何れそうなるだろうし、第一3000m級の山なんか来年来るかどうかも分からない、なんて考える。しかし一休みして結局山頂を目指す。ここからまた少し降って登り返しになるが、途中で直登コースと巻き道に分岐する。昨夜の主の話「急坂は登りは楽」を思い出して迷わず直登コースを選択。しかしこれが又間違い、コースと言っても岩登りの連続で2本のストックが邪魔になるほどに四つん這いで這い上がって行く感じ。コース標識が極めて分かりにくい。時間的には巻き道の方が早かったようだ。


ともあれ8時50分には山頂で記念撮影、雲も風も全く無く、360度のスカイラインの美しさは何とも言えない。本当に来てよかったと言う感じ、心の中で仙水小屋の親父に感謝を捧げる。


帰りは北沢峠発15時30分の最終バスを予定し、それに合わせて電車も甲府発18時5分の指定を取っていたが、北沢峠発12時55分発に間に合い、帰宅8時の予定が6時には家に帰ってきてしまった。


いろいろな偶然が重なり合ったのだが素晴らしい今年の夏休みだった。

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