2009年9月11日金曜日

歴史 上 岩波文庫 ヘロドトス著

歴史書と言えるかどうか分からないが「日本書紀」とか「古事記」が書かれたのが7世紀か8世紀とされている。この書は紀元前5世紀に書かれたとの事。作者はハリカルナッソス(ギリシャの1都市国家)のヘロドトスと特定されている。何でも世界最古の歴史書と言う事に興味を引かれて読んでみた。原作は全9巻まであるが、その3分の1の第3巻までである。

叙述される地域がエーゲ海を中心に北アフリカからユーラシア大陸の西から東はインドまでに及び、その中に点在する多数の都市国家と、そこに君臨したとされるこれ又夥しい人名が出てくるので正直訳が分からなくなる。更に自分の実証と伝聞を併せ歴史を語っているのだ。よくもまあ2500年もの昔に、嘘にしても聞き語りにしてもこれだけの著作を成し遂げたものだ。

感心するのは当時の人間が地中海を股にかけて、交易したり又は戦争をして行き来していた事が事実らしい事だ。当然キリスト教もイスラム教もまだ存在しない頃の話ではあるが、当時から歴史はペルシャ人とギリシャ人の対立、即ち戦いが基軸になっている。又、戦いのきっかけは怨恨とかいろいろあるが、他国の王族の女性を攫う事から始まっているのが多いのもも興味深い。

当時は全ての国家が独裁国家だったのだろうが、権力者にも民主的なタイプ、仁を備えたタイプ、気ちがいじみたタイプ、様々なタイプが居るのは現代と少しも変わりがない。常に戦いに備えなければ国家が成り立たない時代でもあったのだろう。いとも簡単に敵ばかりでなく身内も含め人を殺したり人肉を食う話が頻繁に出てくる。しかし人間の数が最大の資源であった筈なので、権力者は如何に人間を蓄えるかに相当意を用いていた様子が伺える。女性をやたらには殺さないし、浚ったりするのもその辺に事情がありそうだ。

日本では完全に神話の時代だが、人類の話でもあるし、スケールが大きくて結構面白い。

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