2009年8月21日金曜日

バランス―実利と厚み

毎週日曜日の夜の楽しみはその日の昼にNHK教育で放送された囲碁の番組を録画で見る事だ。
今週の日曜は登山の疲れで早く休んでしまったので見る事が出来ず、昨晩やっと前半の囲碁講座だけ見た。講師は石倉9段、この方は9段としては比較的若いプロ棋士で、東大の囲碁部出身、メジャーな棋戦での活躍はあまり聞かないが、9段と言うのはプロの最高段位である。特に初級者の指導についてはプロ棋士の世界でも定評があるとされている人だ。私もファンの一人でこの番組を毎回熱心に視聴している。今回は囲碁の指導に入る前に話した事が非常に印象的だったので日記に記したい。

曰く。「囲碁はいろいろな意味でバランスがとても大切、陣地の取り合いのゲームだが何でも一人占めしようとしてはいけません。」
ここまでは囲碁を少しでもする人なら誰でも知っている。「取ろう取ろうは取られのもと」だ。引き続き具体的例を挙げた。

「囲碁には実利と厚みのバランスがあります。実利とは地(最終的にその大きさで勝敗をつける陣地を言う)の事です。厚みとは地ではないのですが勝負が進むにつれて、非常に有効性が発揮される骨格(と言ったか、壁と言ったか記憶にない)のようなものです。勝負の序盤、地取りにばかり走っても、厚みが無いとじわじわと地が減って行って結局負けると言う事が良くあります。一方厚みだけでは地が足りませんから結局負けます。従ってこのバランスをどのように形成していくかという事が、プロにとってもとても大事な事となっているのです。勿論、地が好きなプロ、厚みを重視するプロいろいろ居ます。」

ここからが印象的なのだ。更に司会のお姉さんがこんな質問をした。
「実利と厚みのバランスが大切な事が分かりました。囲碁以外でも通用する事がありますか?」

「実生活でも同じ事が言えるのではないでしょうか。<実利>とは例えばお金であったり、テストの点であったりと考えていいかも知れません。すると<厚み>は友達であったり、家族であったり、趣味であったり、仕事や学校と直接関係ない所で培われている人間性や感性だったりするのではないでしょうか。やはりこのバランスがとれて、初めて豊かな人生が生まれると理解したらどうでしょう。」

半分寝ながら見ていただけで別にメモを取った訳でもないので正確ではない。しかしプロ棋士ではあるが東大で講座を持つだけあってうまい事を仰る。人生を組み立て直すにはいささか時期を逸しているが、我が意を得たりと思った。

2 件のコメント:

kiona さんのコメント...

地と厚みか、確かにそうですね。 個人でも、企業でも、国家でも同じかもしれません。 理想だけでも食っていけないし、かつてジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた国の国民も '豊か' にはなれなかった。

政治的なことで言えば "成長戦略" が厚みでしょうか。 はたして、どちらのマニフェストが厚いのでしょうか。 どちらも薄かったりして。 。

senkawa爺 さんのコメント...

KIONAさん
コメントをありがとうございます。

仰る通りかもしれません。