2009年6月11日木曜日

チャレンジ又は年寄りの冷や水

知らない人が聞いたらびっくりするだろうが、私はホームページの制作と管理を生業にしている。そもそも文系の学校を出て最初に就職したのが広告代理店、勿論営業職である。それから40数年ずっと営業職でやってきた。しかし63歳の時に、はずみのような事で独立を余儀なくされ、ありていに言えばお払い箱になって、現在の会社を急きょ立ち上げた。それが今の会社で、それまで営業として抱えていた得意先の仕事を持って独立したので唯一の仕事がホームページ関連という訳である。


元の会社でも制作の大半は外注に頼っていたので、当初は外注先にも話をつけて仕事を引き続きしてもらった。しかし一人営業の会社になると技術者が外部に一人いるだけでは話にならない。ホームページというものはしょっちゅう、しかも不定期に内容(コンテンツと言います)が更新される仕掛けになっている。更にサーバ管理とか技術的に言えば、コンテンツ制作とは別のスキルを持った要員も確保しなくてはいけない。かと言って各技術者を社員として抱えるほど売り上げがあるわけでもない。自分自身と言えばパソコンで文書を書く事すらままならない状況で、分かってはいたが度胸良く起業したものだ。

それから6年、サポートスタッフの確保には苦労したが何とか今日まで仕事を続けている。そして私自身も少しずつではあるが技術関係について解るようになってきた。と言っても自動車の運転でハンドルを左に回せば車は左方向に動き、アクセルを踏めば加速するといった程度の知識を身につけたという事にすぎない。とても車の運転を出来るようにはならないだろう。しかしだいぶ分かってきた事が別にある。

このインターネット関連サービスの世界にはオールマイティーの技術者が極めて少ないことである。電気通信や電子工学的な知識が一定の水準に達しないとホームページの管理が出来ないのは当然であるが、その部分で高いスキルを持っていても最終的にモニターに表示される画面のディザインはディザイナーさんの職域である。この部門を担当するのがウェブディザイナーだ。更には画像の処理を専門にする人とかコーディングといって作文で言う所の清書の専門家と、機能別に職域が多様化している。

その昔、広告会社はどこの会社にも広告を作るためのセクション制作部とかクリエイティブ部があった。ここには基本的にコピーライターとグラフィックディザイナーという2種類の人種で構成されていた。テレビ時代になるとこれに映像ディレクターなる人種が加わる。ここにはかつて記録映画を撮っていたニュースカメラマンとか映画会社で助監督をしていたといった異業種から人が入ってくるようになった。そうこうして仕事が増え人間が増えると業務が細分化されて、平面広告或いはCMプランを専門にする人、又はアートディレクターやプロデューサーと称してコピーやディザインの専門職を統括して総合的な管理監督をする人が誕生したのである。しかし彼らの元をただせば殆どは制作セクションのどこかに所属していた筈である。

広告会社がウェブの時代に突入したのは未だ10数年前で、自分は既に窓際にいたので制作部門がこれにどう対応したか詳らかではない。現在は当然ウェブプランナーとかウェブディレクターといった職種が確立されている事だと思う。このような人たちがどのような職歴で現在の地位を確立するに至ったのだろう。大いに興味がある。現在の自分に肩書を付けるとすれば立派な「ウェブディレクター」だろう。おそらく日本では最年長ではあるまいか。

今日たったさっき、村上春樹氏の「1Q84」を読んだばかり。全くちんぷんかんぷんで面白くなかったが一つ印象に残った言葉がある。自分はその事にささやかな抵抗をしているという意味で、読後感に書き忘れたのでここに書いておく。

「歳をとるという事は何かを失っていく連続の過程」。(引用は不正確かもしれない)

5 件のコメント:

kiona さんのコメント...

IQ84はこの騒がれ方のなかで食傷気味です。いつもの春樹流だそうなので、文庫にでもなったら読もうかと。 。

本日の内容は自分にもよくわかることで、 まさに貴殿はウェブディレクターであられましょう。 いや、ウェブプロデューサーかな。

映画においても作品は出演者や監督で知られますが、やはり立役者はプロデューサー。 資金面を握っている営業肌、ということでやはりプロデューサーがふさわしいのではないかと思われますがいかがでしょう。

海外のウェブでも、デザインとコーディングは別になっていることが多いようですが、いずれにせよ最年長というのはたんに年齢をとってどうのこうのではなく、日本の企業社会では定年組とされる年代でも、ITのプロにモデルチェンジしてあと10年や20年やれるということを証明していると意味においてTECHCRUNCHの取材対象になっていいと思われるほど素晴らしいことです^ ^

はてなの梅田さんばかりではないのです^ ^

senkawa爺 さんのコメント...

kionaさん
いつもコメントをありがとうございます。
又、身に余るお褒めの言葉で恥ずかしくなります。

いや~、村上春樹さんには参りました。ああいったものが現代の大作家先生なんですかね。川端康成とか大江健三郎、私は読んだ事がありません。彼もノーベル賞級作家だそうですから、たとえ漫画チックでも難しすぎて理解できないという事でしょう。

ところで、はてなの梅田さんて誰の事ですか?

kiona さんのコメント...
このコメントは投稿者によって削除されました。
kiona さんのコメント...

春樹さんですが、これこそ世代と言いましょうか、共感はあるんですよね。 他のアジアや意外な世界の片隅で受け入れられていることも時代のシンクロニシティとして認めることはやぶさかではありませんが、世代感覚以外のもう一つのポイントとして、 春樹さんというのは米文学の系譜なんだと思うんです。 日本の他の作家で、ドイツやフランス、あるいは南米文学の系譜にある人はいるんですが、アメリカというのは意外に少ないのではないかと思うのです。 アメリカ文学というのは当然歴史は浅いし、実験的な文学と言えるかと思うんですが、 たとえばヘンテコな比喩。 それが楽しめるかどうか。

ぼくは雨の日なんかに、過去も未来もどうでもいいという気分のときに、布団にもぐり込んで村上春樹を読むのが好きでしたね^ ^

たとえまったくつまらなくても、読んだのは貴重な経験だと思います。 読まないで語る人もいますからね。

梅田さんというのは、はてなのオーナー重役で、最近 "日本のインターネットは残念なことになった" との発言で話題の人です。 はてなのような匿名性あるいはネットいなごを批判しているが、実は自分がその責任者でもあるのでアンビバレントな発言なわけですが、それでもそう言わしめる何か残念な状況が日本のネット周辺にあることは共感できます。

もっと年配の人かと思って引きあいに出したのですが、むしろ自分と同年代でした。

senkawa爺 さんのコメント...

kionaさん
丁寧なご返事をありがとうございます。

村上さんの小説はアメリカ文学の流れですか、アメリカ文学と言えばマークトウエインとヘミングウェイくらいしか読んだ記憶がないかな。どちらも読みやすさがあったように思います。今度の1Q84も読みやすさは抜群ですが、感動が無いのが困ります。小説読んで感動してもしょうがないかも知れませんが。

「はてな」も「ネットいなご」も知りませんでした。また一つ利口にして頂きありがとうございます。今「はてな」を見たらトップにブックマークニュースに「卵かけごはん募集サイト」がありました。面白そうなのでこれからゆっくり読みます。