2009年5月7日木曜日

壊れる日本人 再生編 柳田邦夫著

12編の評論で形成されているが、テーマは一貫して現代社会が内包している問題点或いは現代人が喪失しつつある重大なものを鋭く描き出している。何れも深刻な問題ではあるが筆致はユーモアと人間味に富み非常に面白く読める。

あとがきで筆者自身が語っているが、筆者の頭にずっと流れているのは「言葉」の問題である。それは「言葉と心」であったり「言葉といのち」であったりする。確かに人は「言葉」で力を与えられたり命まで救われることがあるのだろう。特に日本語はそのきめの細やかさにおいて類を見ないほど優れている、いたのではないだろうか。

逆に言えば人の語る言葉、書く言葉には命があり力がある事になる。筆者が心配するようにIT化が進む現代社会、或いは成績とかお金とかが人間性を測る基準になりつつある社会が大事なものを喪失せしめている事は事実だろう。しかしそれを失わないように努力している人たちもたくさん紹介して未来を絶望視していないのも好感できる。大勢の人に一読を勧めたい。

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