2025年1月18日土曜日

読後感「魂の昭和史」福田和也著

 この年末年始にかけて読んだ本の中で一番感銘したとも言える。実は著者のことは昨年末まで知らなかった。文藝春秋かテレビか忘れたが歴史関係に詳しい同じ職業を持つ人間の保坂正康氏が福田氏の功績を絶賛しているのを知ってのこと。アマゾンで著書を探し当てた結果入手したものだ。ネットで著者の経歴を確認すると1960年生まれの慶應義塾大学名誉教授で昨年10月に亡くなられている。肉声を聞くことなく早逝されたことは残念だ。

本書は著者自身が<まえがき>で述べているように10代、20代の若い読者を念頭に書いているので易しく分かりやすい文体になっている。著者の活動の実態を知らないので的を外しているかもしれぬが、同時に読んでいたフランス人評論家のエマニュエル・トッド氏の人類学的分析に共通するところが大きいように感じた。著者もトッド氏も同じ国民は意識するしないに関わらず、魂の深いところで共振する深い絆があると言っている。

外国で大きな事故が起きるとマスコミは「この事故のために亡くなった日本人はいません」なんて報道するが、それが横の絆とすれば歴史の事案も同じで、歴史を学ぶと日本のことについては心の奥で共振を感じる筈だとのこと。確かにそれは同意する人が多いだろう。

本書の内容は昭和以前、江戸末期から明治大正年間に於ける日本の世界的視点からの位置付から解説が始まり、対象の末期から昭和にかけ本格的戦争の時代に突入した時代背景と経緯が述べられ、敗戦によるアメリカの占領政策変によって変わったことと変わらなかったこと、アメリカ人と日本人の気質の大きな違い。更には復興復旧を経てバブル経済があり、それも元の木阿弥水の泡にとなってサブカルチャー時代が来て本当の戦後が始まったと言う。ものに対する憧憬が薄れて、価値観の多様化が来たと言いたいのだろう。

2002年即ち平成半ばの発刊本なので、若い読者に向けて昭和と同じ過ちを繰り返さないために、歴史を学んで新しい道を訪ねること薦めている。しかし残念ながら令和6年の今、満州事変が勃発した昭和6年に共通するものを多く感じてしまうの何故だろう。

0 件のコメント: