2024年7月6日土曜日

読後感「西遊記」平岩弓枝著

 久しぶりに読後感を書こう。西遊記は日本では有名で、あらすじを知らない人は少ないだろう。著者が中国語に特に得意だったとは思えないが、挿絵を担当している蓬田やすひろ氏。この人の挿絵が物語を一層楽しく膨らませてくれた。購入した文春文庫全4巻には<まえがき>や<あとがき>と言った解説的なものは皆無。全体で30章に分かれて構成されている。お話は唐時代の今の中国。都が長安に置かれ、7世紀初めから10世紀初めまで、日本からも遣唐使による朝貢が繰り返されていた世界帝国の2代目の太宗の御代。

太宗の命を受けた一人の高僧(実は王の弟)が天竺へと旅立った。名は玄奘三蔵、取教のためである。王は統治のため仏教の普及が必要と思ったようだ。そのため、お釈迦様生誕の地から有り難いお経を分けてもらうことを算段。三蔵は途中で竜馬を見つけ、猿の孫悟空や豚の猪八戒、河童の沙悟浄の3名か3匹との出会いがあり、彼等を弟子として旅を続ける。しかし旅は困難苦難の連続で当初3年で天竺到着を予想していたが、結局14年もの歳月過ごすことになる。

この試練を克服出来たのは、つき従っていた弟子共の活躍もあるが、偏に仏法の力。原作は子供のためであったかどうか知らぬが、仏教を分かりやすく解説した教科書的な匂いもありそうだ。言わんとするところは、人の世は悪い化け物で満ちているし、人間も怠惰に流れると、どうしても碌でもない者に変身してしまう。厚く仏法を敬えとの意だろう。仏教がインドからチベットなどを経過して中国に齎されてた経緯は詳しく知らぬが、このお話で想像を逞しくすることは可能だ。

日本の桃太郎伝説の家来に猿と豚が登場したかどうか忘れたが、動物が桃太郎を助ける発想は恐らく西遊記を下敷きにしたと思う。感想として強く印象付けられたのは<化け物・妖怪は人間の姿をしていても影が出ないこと。猿の孫悟空が指摘している。太陽の恵みには影がつきものなのかもしれぬ。もう1点は三蔵が天竺から持ち帰ったお経は5048巻、随分中途半端な数字だが、涅槃経400巻から始まり、具舎論経10巻に至る目録が掲げられているのも興味深い。果たして現在仏教のお経にも通じているのかどうかだ。一応仏教徒になっているが、半信半疑だ。

0 件のコメント: