2021年11月19日金曜日

貴公子

 海外に目を向けるとややこしい問題が沢山あって、各国の首脳たちが慌ただしく動いている。ところが国内を振り返ると、平穏とは言わぬが政治家の動きに見るべきものが無い。既に2期目に入っている岸田内閣だが、実際には国会も開いていないので、2ヶ月近くなった現在でも何をしてるのか全く分からない。呑気なものだ。第一岸田氏が総裁選に立候補をぶち上げた日を確認したら8月28日となっている。総裁選は菅総裁の任期が切れる9月末とされていたから、その1ヶ月も前の話だ。その日から勘定すればもうそろそろまる3ヶ月。

この約3ヶ月間、日本の政界というちっちゃなコップの中では確かに様々な事象が起きている。しかしそれが日本社会をどう変えていくかについては未だに曖昧模糊としたままであるのも事実。なんたって政策を論じ合う肝心の国会が未だに開催されていない。立候補宣言した日の記者会見で、岸田氏はいろいろ良いことを仰っているが、これを覚えている人は少ないだろう。なんと仰っったかと言えば「国民政党であったはずの自民党に声が届いていないと国民が感じている」と強調したのだ。

前任の菅氏に比べれば遥かに歯切れもよく爽やかに聞こえたのだろう。多くの人が彼に期待したのは明らかだ。岸田氏自身もその感触を感じ取ったに違いない。総理大臣の職を掴んだと思ったらまともな国会論戦はすっ飛ばして、いきなり総選挙と奇策に打って出た。これにも驚いたが、これも大成功。岸田氏の出身派閥は小さく、党内基盤は危うくともマスコミがその成功を持ち上げてくれるので、悪い表現で言えば少し図に乗り始めている感がある。

老婆心で言えば、帝国海軍が嘗て真珠湾攻撃ですっかり気分を良くしたように見えなくもない。真珠湾攻撃の僅か半年後のミッドウェー海戦での敗北がそもそものケチのつき始めとなった。来年7月の参議院議員選挙が岸田氏にとってミッドウェー海戦となりかねない要素には事欠かない。最大の問題は出馬宣言で明言した「党のガバナンス改革をしっかりと進めていく」が全く行われず、党内の不満は相当高まっているようだ。

もちろん表明していた政策に関しては、その裏付けが全く着手できていないので『令和版所得倍増』計画なんて夢のまた夢のこと。マスクも良いし弁舌も爽やか、これで首相が務まるなら役者さんでも連れてきたほうが早いかも知れぬ。古来公家の中にも、天皇の中にも泥にまみれて武士と戦った人はいる。公家集団の出身だからとバカにするつもりはないが、どうも岸田氏は泥にまみれた姿が想像しにくい。

0 件のコメント: