2021年6月17日木曜日

政治のスピード

 日本のマスコミは1ヶ月ほどに迫ったオリンピックが気がかりで、世界情勢に余り関心がいかないようだ。しかし世界は(と言うより小生はかな)今年大統領が代わったアメリカの動きを固唾をのむような思いで見てるに違いない。前大統領トランプ氏は、色んな面で中国と競うのを嫌ったのかどうかは分からないが、「アメリカファースト」と言って世界政治からやや距離を取りながら勝手な振る舞いに出た。中国との向き合いかたでも、アメリカ経済のために関税で争ったり、不都合な商品や企業を排斥したり、どちらかと言えば単純だったとも言える。

しかしバイデン氏は中国の脅威をもっと深刻に捉えたようだ。即ち、もはや新興国とは言えないほどに成長して、経済的にも軍事的にも米国に迫っている中国をなんとかしないと、将来に禍根を残しかねない。そのために、ある程度親和性のある諸国を連合して対中包囲網を形成する必要がある。一昔前に日本の政府が言い出した対中戦略と似てるようにも思うが、危機感の持ち方は前大統領とそれほど違うということだろう。カナダや欧州諸国は中国と経済的結びつきが強いし、軍事的脅威はそれほどでもなかったろうが、それでもアメリカが言い出したことに一応乗った。日本は言うまでもない。

あとは最近中国と比較的仲が良くなっているロシア、これを総仕上げの形で何とかしようと昨夜首脳会談に持ち込んだ。結果は既に報道されてる通り、当面の問題は全て現状維持だが、取り敢えず互いに引き上げていた大使を復任させ大使館機能を復活するところまで漕ぎ着けた。バイデン氏にすれば一安心で、愈々対中折衝を本格化出来ると思ったに違いない。一方の中国は、いつも「世界に覇を唱えるつもりはありません。世界とは多国間主義で自由に交易できることが一番です。」見たいこと言って、アメリカが嘗ての覇権を取り戻すことにやっきになるのを覚めた目で見ているように見えなくもない。

兎に角、中国は成長めざましく、アメリカから警戒されるようになったことは確かだが、内外に多くの問題を抱え込んでいる。とてもじゃないが、日本がオリンピックで大騒ぎしてることとは比較にならない。その全てに対処しながら政治を進めているのだから、中国の政治力には驚異的なものがある。その力を「一党独裁に依る専制」と片付けるのは簡単だ。しかしこれを「悪」と切って捨てることは如何なものかと思う。昨夜バイデン氏からロシアの人権問題を軽視しないと警告されたプーチン大統領は、「他人のことより、まず自分の頭の蝿を追え。」と切り替えしたらしい。

今回のバイデン氏の最初訪問地はイギリス、そこでG7会合に出席した。その共同宣言が発表された直後、6月14日の夜、イギリスの中国大使館で記者会見が開かれた。そこでの応答を教えてくれた人がいる。講談社『週刊現代』特別編集委員の近藤大介氏。内容を紹介したいがスペースが足りない。最後だけ引用させてもらう。「反論の内容はほぼ従来通りの中国の主張と言えるが、このスピード感は驚くべきものがある。」

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