2021年1月25日月曜日

読後感「日曜日の歴史学」山本博文著

 歴史学と何やら難しそうな表題がついているが、内容的にはむしろ<日曜日>の方に重点が置かれている。気軽に読める楽しい本だ。80歳を越して歴史知識の無さを痛感しても、今更学ぶつもりは無い。書店でブラブラしている時に気に入ったのが目次。10項目に整理されているが、第1に上げられていたのが「江戸の人物に学ぶ隠居学」だった。この項目だけ内容を詳しく紹介したい。

取り上げられている人物が次の5人、神沢杜口・伊能忠敬・大田南畝・村尾嘉陵・貝原益軒である。歴史の世界では著名な人が多く取り上げられるが神沢杜口と村尾嘉陵は知らなかった。しかし現在でもそうだが、現実社会は有名でない人が圧倒的に多いので、有名人ばかり追いかけては現実を見失うことにも繋がりかねない。その意味から考えても本書は新しい見方を教えてくれている。

文庫本で300頁足らずの小冊子なので、時代的には江戸時代のことに限られているが、江戸時代を大きく掴んで理解するために大変役立ったような気がする。著者のことに触れたい。山本氏は若くして江戸時代をテーマにした小説や解説書も多く発表している。いわば江戸時代の武士生き様の研究者として現代を代表する一人のようだ。しかし本業は東大出身で東大教授の歴史学者。年齢的にも小生より17歳も若い。

しかし、残念なことに昨年3月に亡くなられたしまった。武士の生き様が忘れ去られつつある現在、貴重な人材がいなくなったことを寂しく思わざるを得ない。学術会議を無視する政治家共には分からないだろうが、学者が亡くなると、学者の頭に刻み込まれている貴重な歴史的事実が一緒に無くなってしまう。ある意味での国家的損失とも言える。本書を読み終わってから知ったが心からご冥福を祈りたい。

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