読後感「桑中喜語」永井荷風著

読後感をかくことを少し迷ったが、著者が文化勲章受章の日本を代表する文学者でもあり、他に書きたいことも無いので敢えて書くことにする。著者の名前はよく知っていたが、その作品となると何を読んだか記憶が無い。ひょっとすると何も読んでいないかも知れぬ。本書を読んだのは高校同期の友人がグループメールで次の言葉を紹介してくれたからである。即ち「追懐は老者無上の慰楽となす所なり」我々の年代になれば誰しも昔が懐かしい。

大文学者が何をもってお墨付きを出したのか?それにしてもへんてこな題名だ。友人が題名については先ず次のように解説してくれた「桑中喜語とは桑年にあたっての述懐」というような意味で、桑年とは四十八歳のことだそうです。桑の異体字である「桒」が、十を四つと八を重ねていることから、四十八を指す。重ねて次のように述べる。「桑中(そうちゅう)」には、別の(というか、本来の)意味があって、関心のある方は「広辞苑」で確認してみてください。」と何故か意味深である。

広辞苑で調べるより読んだほうが早かろうてなことで、早速アマゾンで検索すると、なんとkindle版が0円、即ちロハ。直ぐにダウンロードした。著者の小説は私小説や親戚知り合いをテーマにしたものが多いそうだが、これもその典型である。自らの女性遍歴を赤裸々に綴っている。ネット上のwikiには略歴が詳しく書かれているが、明治時代の高級官僚の家庭に生まれ、今でも超難関とされる小中高校を卒業しながら、女性への追求心と言うか憧れが極めて早熟、晩年に至るもその気持は変わらなかったようだ。

本書は著者46歳の作品であり、この時既に、自分はこれまでの生涯の醜聞をさらけ出して通俗小説を書いて稼ぐ、と明確に宣言している。そのためには下情、即ち下々の事情に通じなければならないから、10数年に亘る海外生活を含め、あらゆる岡場所を漁ってきた。と正直に書いている。因みに最初の経験は「僕年甫めて十八、家婢に戯る。」と書いているから、18歳の時女中に手を出したのが始まりで、後は一瀉千里、市内の遊里を軒並み探訪したらしい。

結婚も2回しているが、当然破綻。死んだのは知人の家に間借りしている時。血を吐いて倒れているのを朝出勤してきたお手伝いさんが発見したそうだ。wikiによれば所持品には現金30万円強と預金通帳数千万円、他に文化勲章などを入れた鞄があったらしい。享年80歳。ご本人は満足してあの世に旅立ったことだろう。

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