読後感「昭和の怪物七つの謎」保阪正康著

書店で立ち読みして面白そうだった「安倍晋三はなぜ”嘘”つくのか?」とどちらを買おうかと迷ったが、結局こちらを選んで正解だったようだ。やはり知っていることより知らないことの方が興味深い。

いま巷で問題化している日韓問題を考えても、思うのは日本人はあまりにも歴史に無頓着(過ぎてしまえばどうでもいい)すぎることだ。その1人として、自分が生きてきた人生の前半部分について知らないことが多すぎる。理由の一つは両親や兄の家族を含め親類縁者の人たちが全員その日の暮らしに追われ、当時の社会情勢を幼子に解説する余裕など当然無かったこともあろう。更に敗戦で戦前の日本が全否定されてしまったので、戦前の思い出なんか口にするのも憚られたのも容易に想像できる。

昭和15年生まれだから、25年には10歳。文字も一通り読めただろうし、茶の間にはラジオだってあって、毎朝15分程度はニュースを聞いていたようなかすかな記憶もある。しかし今でも覚えている単語は僅か数語に過ぎない。

余計なまえがきが長すぎた。本書は昭和氏研究の第1人者とされる保坂氏が自ら書いているあとがきの一節を引用させてもらう。「同時代の中では見えなかった風景や、さほど詳細に語られていないが歴史の視点で見ればきわめて重要な構図、さらには人間模様を取り上げている。」七つの謎はすべて人間を中心に探られている。

もちろん本人が既に物故して直接取材ができなかった人物もいる。戦犯として死刑となった東條英機、515事件で殺害された犬養毅、226事件で殺害された渡辺錠太郎の3人である。しかし著者はその奥さんや娘さんたちにも長時間のインタビューもしているし、資料の読み込みは外国の公文書館や図書館にも及び、関係者への取材は膨大なものがあるだろう。

膨大な資料に基づいてこの書を纏めるに際し、著者は取材対象に媚びるでもなく、またはなから悪者と断じているわけでもなく淡々と歴史の根源に近づく努力に徹している。個人的感想を一言だけ加えたい。先の大戦の原因がどこにあったかである。単に軍人が政治を壟断した、ではすまないような気がする。むしろ、典型的官僚である職業軍人を育てた日本の官僚教育と、戦後も続いている組織の全員がヒラメのように上しか見ない日本式ヒエラルキー構造に深い根を見つけた思いだ。

以下が本書の構成(章立て)

1.東條英機は何に怯えていたのか 2.石原莞爾は東條暗殺計画を知っていたのか 3.石原莞爾の「世界最終戦争」とは何だったのか 4.犬養毅は襲撃の影を見抜いていたのか 5.渡辺和子は死ぬまで誰を許さなかったのか 6.瀬島龍三は史実をどう改竄したのか 7.吉田茂は何故護憲にこだわったのか

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